アントラサイクリンは、小児がんに対する有効な治療薬の1つであり、ほとんどの小児腫瘍治療グループは、アントラサイクリンの血液毒性と心毒性は同等と考えている。今回、オランダ・アムステルダム大学のElizabeth A. M. Feijen氏らは小児がんサバイバーの大規模コホートのデータを解析し、「ドキソルビシンと比較してダウノルビシンは心筋症リスクが低く、エピルビシンはほぼ同等である」ことを明らかにした。また、現在の造血器ベースでのミトキサントロンのドキソルビシン用量等量比は4 vs.1とされているが、同比では、ミトキサントロンの長期心筋症リスクを有意に過小評価していると考えられる所見も明らかになったという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年5月号掲載の報告。
研究グループは、ドキソルビシンと他のアントラサイクリン、またはアントラキノン系のミトキサントロンとの間の遅発性心筋症に関する最適用量等量を決定する検討を行った。
1970~99年にChildhood Cancer Survivor Studyで治療された2万367例、1963~2001年にオランダのChildhood Oncology Group LATER studyで診断された5,741例、および1962~2005年にSt Jude Lifetime studyで治療された2,315例から、5年以上生存した小児がんサバイバーを対象として併合解析を行った。
各薬剤(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)の、累積投与量と胸部放射線照射について医療記録から要約した。主要評価項目は、40歳までの心筋症であった。Cox比例ハザードモデルを用い、胸部放射線療法、がん診断時の年齢、性別およびアントラサイクリンまたはアントラキノンへの曝露を調整した心筋症リスクを評価。また、ドキソルビシンの心筋症に対する各薬剤の等量比を推定し、次いで加重平均によりすべての用量カテゴリーにわたる全体的な薬剤特異的等量比を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・2万8,423例のサバイバー(女性46.4%、がん診断時年齢中央値6.1歳)のうち、9,330例がドキソルビシン、4,433例がダウノルビシン、342例がエピルビシン、241例がイダルビシン、265例がミトキサントロンを投与された。
・がん診断後の追跡期間中央値20.0年で、心筋症399例が確認された。
・ドキソルビシンと比較した等量比は、ダウノルビシン0.6(95%CI:0.4~1.0)、エピルビシン0.8(95%CI:0.5~2.8)、ミトキサントロン10.5(95%CI:6.2~19.1)、イダルビシンに関してはイベントがまれで推定できなかった。
・線形用量反応関係に基づく比は、ダウノルビシン(0.5、95%CI:0.4~0.7)、エピルビシン(0.8、95%CI:0.3~1.4)で類似していた。
(ケアネット)