強力なCDK4/6阻害薬であるtrilaciclibは、その作用機序および前臨床試験から骨髄毒性の抑制および抗腫瘍作用の改善効果が期待されている。今回、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する多施設無作為化非盲検第II相試験において、ゲムシタビン/カルボプラチン(GEM/CBDCA)にtrilaciclibを追加することにより、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告された。一方、主要評価項目である好中球減少症の有意な抑制効果は示されなかった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Texas Oncology-Baylor Sammons Cancer CenterのJoyce O'Shaughnessy氏が発表。なお、本試験結果はLancet Oncology誌オンライン版9月28日号に同時掲載された。
・対象:再発/転移乳がんに対して0~2レジメンの化学療法を受けたmTNBC患者
・試験群:以下の3群に無作為に割り付け
グループ1:GEM/CBDCA(Day1、8) 34例
グループ2:GEM/CBDCA(Day1、8)+trilaciclib(Day1、8) 33例
グループ3:GEM/CBDCA(Day2、9)+trilaciclib(Day1、2、8、9) 35例
病勢の進行(PD)もしくは不耐の毒性発現まで21日ごとに投与
・評価項目:
[主要評価項目]GEM/CBDCAによる好中球減少症の抑制(1サイクル目におけるGrade4の好中球減少症の期間、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の発症)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、OSなど
主な結果は以下のとおり。
・52.0%がECOG PS 0、37.3%が化学療法を受けていた。
・追跡期間中央値は10.5ヵ月(範囲:0.1~25.8ヵ月)であった。
・薬物曝露期間の中央値は、グループ1(3.3ヵ月、4サイクル)に比べ、グループ2(5.3ヵ月、7サイクル)およびグループ3(5.5ヵ月、8サイクル)で延長した。
・1サイクル目のGrade4の好中球減少症の平均日数、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の患者割合とも有意な差がみられず、trilaciclibによる骨髄抑制の有意な改善は認められなかった。
・ORRは、グループ1の33.3%に対して、グループ2(50.0%)、グループ3(36.7%)とも有意な差はなかった。
・PFSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.60、95%信頼区間[CI]:0.30~1.18、p=0.13)およびグループ3(HR:0.59、95%CI:0.30~1.16、p=0.12)で有意な改善は認められなかったが、グループ2と3の合計では改善傾向がみられた(HR:0.59、95%CI:0.33~1.05、p=0.063)。
・OSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.33、95%CI:0.15~0.74、p=0.028)、グループ3(HR:0.34、95%CI:0.16~0.70、p=0.0023)、グループ2と3の合計(HR:0.36、95%CI:0.19~0.67、p=0.0015)とも有意に改善した。
・trilaciclib関連の重篤な有害事象はみられなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)