膀胱がん、ガイドライン4年ぶりに改訂/日本泌尿器腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/07

 

 膀胱癌診療ガイドラインが2015年から4年ぶりに改訂された。日本泌尿器腫瘍学会第5回学術集会では、パネルディスカッション形式で膀胱癌診療ガイドラインの改訂ポイントについて解説した。

 聖マリアンナ医科大学の菊地 栄次氏はStage IV膀胱がんの治療について、改訂された膀胱癌診療ガイドラインの6個のCQから一部を紹介した。

・「局所進展例または骨盤内リンパ節転移を有する症例に対して膀胱全摘術は推奨されるか?(CQ19)」については、推奨の強さ2、エビデンス確実性Cで、「化学療法が有効であった症例には考慮することが推奨される」となっている。
・「転移を有する膀胱がんに対する転移巣切除は推奨されるか?(CQ20)」については、推奨の強さ2、エビデンスの確実性Cで、「全身状態が良好な症例、病巣が単発で完全切除が可能な症例、化学療法が有効であった症例、病勢の進行が急速ではない症例等で転移巣切除を考慮することが推奨される」となっている。
・「切除不能または転移を有する症例の1次治療としてGC療法は推奨されるか?(CQ21)」 については、推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで、「1次治療としてGC療法は推奨される」となっている。なお、2015年版の膀胱癌診療ガイドラインではM-VACとの比較であったが、今回はdose-dense M-VACとの比較である。
・「1次治療抗がん化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性膀胱がんに対する免疫チェックポイント阻害薬使用は推奨されるか?(CG23)」については、「推奨の強さ1、エビデンスの確実性A で、「ペムブロリズマブを使用することが推奨される」となっている。なお、ESMO2019ではKEYNOTE-045の長期成績の結果が発表され、全生存期間(OS)は依然として有意差を示し、10%の完全奏効(CR)を得ている。

 菊地氏は、今後のStage IV膀胱がん治療の展望として、外科的治療に対する臨床的意義の検証、さらなる新規薬物療法の登場、CDDP unfit例に対する新たな治療戦略への期待を挙げた。

 高知大学の井上 啓史氏は、今回の膀胱癌診療ガイドラインにおける筋層非浸潤性膀胱がん(NIMBC)の腫瘍可視化技術の位置付けについて紹介した。

・「膀胱がんの診断に腫瘍可視化技術(Photodynamic Diagnosis :PDD、narrow band imaging:NBI)は推奨されるか?(CQ1)」については、PDDは推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで、NBIは推奨の強さ1で、エビデンスの確実性Bで、「がん検出頻度が高まることから推奨される」となっている。
・「NIMBCの治療の際にPDDやNBIは推奨されるか?(CQ4)」については、PDDは推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで「膀胱再発率の低下につながることから推奨される」、NBIは推奨の強さ2、エビデンスの確実性Bで「検出率を改善させるが、膀胱内再発率の低下につながるかは未確定である」となっている。

 井上氏は、治療の始まりであるTUR-BTにおいては確実な切除と共に正確な診断が後治療に影響することから、今回の膀胱癌診療ガイドラインの改訂のなかでも腫瘍可視化技術の位置付けは、重要な項目の1つであるとしている。

(ケアネット 細田 雅之)