2019年12月、日本皮膚科学会は「皮膚真菌症診療ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。日本において、真菌感染症のなかでも、足白癬の有病率は人口の約21.6%、爪白癬では10.0%と推計される。この10年間に外用剤(クリーム、液剤、スプレー)や新たな内服薬が発売され、治療状況も変化しつつあるため、改訂した皮膚真菌症診療ガイドラインのポイントを紹介する。
「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」改訂のポイント
皮膚真菌症診療ガイドライン2019によれば、“保険診療上認められていない治療法や治療薬であっても、すでに本邦や海外において医学的根拠のある場合には取り上げ、推奨度も書き加えた。保険適用外使用についても記載した”と記され、各疾患の治療についてはClinical question(CQ)が設定されている。
CQは1~21まで作成され、足白癬や爪白癬をはじめとする真菌症治療に対して、外用・内用療法、各薬剤の有用性について推奨度が示されている。この推奨度は、GRADE分類を参考にしつつも日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」で採用されたエビデンスレベル分類と推奨度の分類基準に準拠している。
併用注意や投与時の注意事項を簡潔に記載
第1章の「疾患概念と診断・治療の原則」には、手・足白癬治療の中心は外用の抗真菌薬(CQ1)を、角化型や接触皮膚炎を合併しているような難治例に対しては内服の抗真菌薬で治療を行うのも良い(CQ2)旨が記されている。また、手・足白癬の爪白癬合併例や爪白癬単独症例では、経口抗真菌薬を第1選択とすべき(CQ5、6、7)とも記載されている。
皮膚真菌症診療ガイドライン2019中盤では各CQの解説がなされており、CQ1では足白癬に対する外用抗真菌薬の有用性が各薬剤の研究報告とともに書かれているほか、皮膚真菌症診療ガイドライン2019発刊時点で発売されている外用薬の一覧表が公開されている。爪白癬治療については、外用薬だけによる完全治癒率は低いものの、経口抗真菌薬が服用できない患者や希望しない患者に使用される、などの注意点が盛り込まれている。
<主なCQを抜粋>*CQ8~21については、ガイドラインを参照。
CQ1: 足白癬に抗真菌薬による外用療法は有用か(推奨度:A)
CQ2: 足白癬に抗真菌薬による内服療法は有用か(推奨度:A)
CQ3: 爪白癬にエフィナコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)
CQ4: 爪白癬にルリコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)
CQ5: 爪白癬にテルビナフィンの内服は有用か(推奨度:A)
CQ6: 爪白癬にイトラコナゾールの内服は有用か(推奨度:A)
CQ7: 爪白癬にホスラブコナゾールの内服は有用か(推奨度:A)
なお、皮膚真菌症診療ガイドライン2019は日本皮膚科学会のホームページ上でも公開されている。
(ケアネット 土井 舞子)