日本国内で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が増えつつあり、大きな懸念の一つとされているのが院内での感染の疑いが出ていることだ。中国国内でも14日までに1,716人の医療従事者が感染し、6人の死亡が報告されている。
2月7日に行われた日本感染症学会・日本環境感染学会主催の緊急セミナー(司会は日本感染症学会理事長 館田 一博氏、日本環境感染学会理事長 吉田 正樹氏)において、菅原 えりさ氏(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科感染制御学 教授)が「感染対策の再確認」と題し発表を行った。
菅原氏は「感染対策は基本の徹底が重要。だが、状況が刻々と変わる中で現場に応じた柔軟な対応も必要となるだろう」と説明。接触感染予防・飛沫感染予防を中心に、場合によっては空気感染予防が必要となり、その標準予防策は手指衛生と咳エチケットになる、という基本を確認した後、「疑い患者が来院した場合」を想定したシミュレーションを提示し、重要な以下のポイントを伝えた。
外来診察時
・帰国者、接触者を中心とした疑い患者と一般患者は受付から動線を分け、その旨を入口のポスターでしっかり注意喚起する。中国語・韓国語・英語表記も必要。
・受付で症状を訴えた患者には、すぐにマスクを着用させる。
・外来診察は個室を確保。窓があって換気のできる部屋がよい。
・近距離で対応する医療者はPPE(個人用防護具)着用。PPEは着脱が難しいので事前にトレーニングを。とくに脱ぐときの感染防止が重要。
・検体採取時にはN95マスク・アイシールドを着用。
・診察後はしっかりと換気を行う。
入院時
・個室を確保。陰圧管理はできればベスト。
・気管内装管などエアロゾルが発生する場合は、医療者は空気感染の可能性も踏まえたフルPPEを着用。
・ICU管理の場合は、相当の負荷がかかる医療者へのケア(シフト等)も必要。
環境衛生管理
・院内の消毒。WHO(世界保健機関)推奨は通常の環境消毒薬、CDC(米国疾病管理予防センター)推奨はCOVID-19に効果のある消毒薬、となっているが、現状では院内で通常使っている消毒薬でよいだろう。
その他
・勤務先が「特定感染症指定医療機関」「第一種感染症指定医療機関」「第二種感染症指定医療機関」に当てはまる場合は、それぞれの役割を確認する(厚労省の指定医療機関一覧)。
・厚労省や医師会の情報から「患者届け出基準」の最新動向を確認する。
・院内モニタリング体制を確認する。
・医療従事者の健康チェック体制を見直す。
・面会ルールを見直す。
・高齢者施設等を行き来する医療者がいる場合は、立ち入りルールを見直す。
菅原氏が理事を務める日本環境感染学会では、オリンピック・パラリンピック前の輸入感染症対策教育を目的としたDVDを制作しており、動画の一部を公開している。「COVID-19を想定したものではないが、感染対策の基本は共通なのでこれも参考にしてほしい」と述べた。
(ケアネット 杉崎 真名)