乳房温存手術を受けHER2陽性非浸潤性乳管がん症例(DCIS)において、術後放射線療法にトラスツズマブを併用投与することの有用性を検討したNRG oncology/NSABP B-43試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で米国・Rush University Cancer CenterのMelody A. Cobleigh氏より発表された。本試験はNSABP臨床試験グループが実施した、オープンラベル第III相無作為化比較試験である。
・対象:中央判定によりHER2陽性が確認されたDCIS患者(切除断端陰性)
・試験群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)にトラスツズマブの併用投与(RT群)
トラスツズマブは初回8mg/kg、その後は3週間隔で6mg/kgを放射線療法に併用投与
・対照群:放射線療法(全乳房照射±ブースト照射)のみ(R群)
・評価項目:
[主要評価項目]同側乳房内再発(IBTR)の発生率
[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、非再発生存期間(RFI)、全生存期間(OS)
主な結果は以下のとおり。
・2008年12月~2014年12月に7,888例が検査され、そのうち2,751例(35%)がHER2陽性と判定され、2,014例が無作為割り付けされた。さらにそのうち1,998例(99.2%)のデータが収集でき、 その追跡期間中央値は79.2ヵ月であった。
・両群間に、患者背景(年齢、核異型度、閉経状況、ホルモン療法の併用率)のばらつきはなかった。
・IBTR発生率は、RT群で5.0%、R群で6.3%、ハザード比(HR)は0.805(95%CI:0.557~1.165)、p=0.26であった。
・IBTRの累積発生率は5年時点でRT群が3.9%、R群が4.9%で、HR 0.81、p=0.26であった。これを、再発が浸潤性がんか非浸潤性がんかで分けて調べたところ、浸潤性では5年時点でRT群1.2%、R群1.4%で、HR 1.11、p=0.74であり、非浸潤性ではそれぞれ2.9%と4.1%、HR 0.68、p=0.10であった。
・5年時DFS率はRT群90.6%、R群88.4%、HR 0.84、p=0.13であった。
・5年時OS率はRT群99%(死亡22例)、R群98.9%(死亡26例)で、HR 0.85、p=0.59であった。
・IBTRに関するサブグループ解析(閉経状況、ホルモン療法の投与状況、核異型度など)でも、両群間に統計学的な有意差は検出されなかった。
・Grade3の有害事象がRT群は4.9%、R群は3.9%であった。また、各群2例ずつGrade3の心機能障害が認められた。またR群で1例、浸潤性のIBTRが認められ、その症例は術後療法(アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブ)を受けた後、急性骨髄性白血病を発症した。
演者のCobleigh氏は「DCISに対する放射線療法へのトラスツズマブの併用は、統計学的な有意差は示せなかったものの、19%のIBTR抑制を示し、毒性も低かった。今後の研究はゲノム分類などを用いて、より高リスク群に焦点を当てるべきだろう」と述べた。
(ケアネット)