StageIV乳がんに早期局所療法は予後を改善するか(ECOG-ACRIN 2108)/ASCO2020

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/06/19

 

 未治療のStageIV乳がんに対する早期の局所療法による予後改善効果についての報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・Northwestern Memorial HospitalのSeema A. Khan氏より発表された。

 本試験はECOG-ACRIN臨床試験グループが実施したもの(ECOG-ACRIN 2108試験)で、第III相の無作為化比較試験である。

・対象:標準薬物療法を施行し、4~8ヵ月間転移巣の病勢進行がなかったStageIV乳がん症例
・試験群:原発巣に対する局所療法(切除断端陰性を確認し、その後の放射線療法は許容)を施行(ELT群)
・対照群:当初の全身療法を継続(CST群)
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]局所の増悪までの期間、QOLなど
・両群とも5年間の追跡期間とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2011~15年に390例が一次登録され、そのうち256例がCST群(131例)とELT群(125例)に無作為化割り付けされた。
・CST群とELT群の間の全体的なクロスオーバー施行率は14%であった。
・ELT群では、125例中109例が手術を受け、切除断端が陰性だったのは87例、その後の放射線療法を受けたのは74例であった。また、CST群では、131例中25例が手術を受けた。
・追跡期間中央値は53ヵ月(データカットオフ2019年12月)で、OS中央値は54ヵ月、ハザード比(HR)1.09(90%信頼区間[CI]:0.80~1.49)、p=0.63で、両群間にOSの統計学的な有意差は認められなかった。
・各サブタイプ(TNBC、HER2陽性、ホルモン陽性)においても、両群間のOSの有意な差は検出されなかった。
・無増悪生存期間(PFS)においては、データカットオフ時点で178例が病勢進行または死亡し、p=0.40であった。
・乳房内再発や胸壁への浸潤、領域リンパ節への転移などの局所再発/増悪の累積発現率は、CST群25.6%(95%CI:18.6~34.5)、ELT群10.2%(95%CI:5.9~17.3)で、HR0.37(95%CI:0.19~0.73)p=0.003と、CST群で有意に高かった。
・FACT-B評価による健康関連QOLは、18ヵ月時点で、ELT群がCST群に比し、有意に低下していた(p=0.001)が、その他の時間軸では、両群間の差は認められなかった。

 演者のKhan氏は「未治療のStageIV乳がんの原発巣に対する局所療法は、生存期間延長などのベネフィットは期待すべきではない。また、本試験と同様のデザインで進行中の日本のJCOG-1017の結果が待たれる」と結んだ。

(ケアネット)