統合失調症では、認知機能障害とメタボリックシンドローム(MetS)などの心血管リスクとの関連が報告されている。認知機能障害や心血管リスク因子は、一般集団においても認知機能を低下させ、統合失調症の認知障害の一因となりうる。大日本住友製薬の萩 勝彦氏らは、統合失調症患者の認知機能障害と心血管リスク因子、認知障害との関連について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年3月3日号の報告。
Embase、Scopus、MEDLINE、PubMed、コクランデータベースより、2020年2月25日までに公表された研究を、キーワード(統合失調症、代謝系問題、認知機能)を使用して抽出した。会議録、臨床トライアルレジストリ、関連文献のリファレンスリストも併せて検索した。メタ解析には次の研究を含めた。(1)統合失調症または統合失調症感情障害を対象とした認知機能を調査した研究(2)MetS、糖尿病、肥満、過体重、脂質異常症、インスリン抵抗性などの心血管リスク因子とアウトカムとの関連を調査した研究(3)統合失調症または統合失調症感情障害の認知能力について、心血管リスク因子の有無により比較した研究。文献ごとに2~3人の独立したレビュアーによりデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。主要アウトカムは、臨床的に検証済みの尺度を用いて測定した全体的な認知機能とした。
主な結果は以下のとおり。
・抽出された27件の研究をメタ解析に含めた(統合失調症患者:1万174例)。
・MetSを有する統合失調症患者では、全体的な認知機能の欠損が認められた。
【統計学的に有意な欠損】
●MetS(13研究、2,800例、エフェクトサイズ[ES]:0.31、95%CI:0.13~0.50、p=0.001)
●糖尿病(8研究、2,976例、ES:0.32、95%CI:0.23~0.42、p<0.001)
●高血圧(5研究、1,899例、ES:0.21、95%CI:0.11~0.31、p<0.001)
【有意差はないがより重度な欠損】
●肥満(8研究、2,779例、p=0.20)
●過体重(8研究、2,825例、p=0.41)
●インスリン抵抗性(1研究、193例、p=0.18)
・特定の認知領域に対する機能低下は、認知機能障害および心血管リスク因子と関連が認められた。
【5つの領域】
●糖尿病 ES範囲:0.23(95%CI:0.12~0.33)~0.40(95%CI:0.20~0.61)
【4つの領域】
●MetS ES範囲:0.15(95%CI:0.03~0.28)~0.40(95%CI:0.20~0.61)
●高血圧 ES範囲:0.15(95%CI:0.04~0.26)~0.27(95%CI:0.15~0.39)
著者らは「統合失調症患者の全体的な認知機能に対するMetS、糖尿病、高血圧の有意な関連が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)