家族性大腸腺腫症(FAP)患者における低用量アスピリン(100mg/日)の使用によりポリープ再発を有意に抑制させたことが、石川 秀樹氏(京都府立医科大学大学院医学研究科分子標的予防医学 特任教授)、武藤 倫弘氏(同 教授)ら研究グループの『大腸がん超高危険度群におけるがんリスク低減手法の最適化に関する研究』から示唆された。この報告はLancet Gastroenterology & Hepatology誌4月1日号オンライン版に掲載された。
FAPでは大腸がんの前がん病変である腺腫が100個以上発生するため、がん予防法として20歳以降に大腸切除術が行われる。しかし、術後QOLの低下、デスモイド腫瘍発生などの問題をはらんでおり、内科的予防法が模索されている。2006年より大腸腺腫患者への低用量アスピリン(100mg/日)による発がん予防に関する試験(J-CAPP Study)が実施され、その効果が立証されている。
本研究はそのJ-CAPP Studyの結果も踏まえて行われたJ-FAPP Study IVであり、低用量アスピリンにメサラジン(2g/日)を併用することで5.0mm以上の大腸腺腫の再発を抑制できるかどうかを検証した二重盲検プラセボ対照無作為化多施設共同試験である。
対象者は5.0mm以上の腺腫の摘除が終了し大腸が温存されているFAP患者で、適格年齢は16〜70歳、大腸切除の病歴がなく、大腸に100を超える腺腫性ポリープの病歴がある者とした。参加者は低用量アスピリン+メサラジン群、低用量アスピリン+メサラジンプラセボ群、アスピリンプラセボ+メサラジン群、アスピリンプラセボ+メサラジンプラセボ群の4つに割り付けられ、大腸内視鏡検査の1週間前までの8ヵ月間にわたって投与が続けられた。主要評価項目は薬剤投与中の8ヵ月での5.0mm以上の大腸ポリープ発生率だった。
主な結果は以下のとおり。
・2015年9月25日~2017年3月13日の期間、104例が4群に割り付けられ、うち2例がアスピリンプラセボ+メサラジンプラセボ群から離脱した。
・8ヵ月の間に5.0mm以上の大腸ポリープが発生したのは、アスピリンプラセボ群26例(50%)、低用量アスピリン群15例(30%)、メサラジンプラセボ群21例(42%)、およびメサラジン群20例(38%)だった。
・ポリープ再発の調整オッズ比(OR)は、アスピリン群で0.37(95%信頼区間[CI]:0.16~0.86)、メサラジン群で0.87(95%CI:0.38~2.00)だった。
・最も多い有害事象はグレード1〜2の上部消化管症状で、低用量アスピリン+メサラジン併用群26例中3例(12%)で発生した。
研究者らは「成人で大腸が保存されている FAP 患者対象の試験としては世界最大の試験成果であり、従来大腸全摘出術が標準治療とされているFAP患者にとって低用量アスピリンが新たな治療法の選択肢となることが期待される。今後は投与期間や人数を増やし、長期効果、日本人FAP患者での副作用の影響などを明らかにしていきたい」としている。
(ケアネット 土井 舞子)