新型コロナウイルス感染症に対して、現在使用されているmRNAワクチンの有効性について、デルタ変異株に対しては低く、経時的に減少する可能性を示唆する医療者での調査結果を、米国・カリフォルニア大学San Diego Health(UCSDH)のJocelyn Keehner氏らがNEJM誌オンライン版2021年9月1日号のCORRESPONDENCEで報告した。
UCSDHでは、2020年12月中旬からBNT162b2(ファイザー)とmRNA-1273(モデルナ)による予防接種を開始し、2021年3月までに全職員の76%がワクチン接種を完了、7月には87%が完了した。新型コロナウイルスの感染者は2021年2月初旬までに減少し、3~6月は検査陽性者が月30人未満だった。しかし、6月15日にカリフォルニア州のマスク着用義務が解除され、7月末にはデルタ変異株がUCSDH分離株の95%以上を占めるようになり、ワクチン接種完了者を含めて感染者が急増した。
UCSDHではワクチン接種の有無に関係なく、毎日、1つ以上の症状もしくは曝露があれば鼻腔スワブのRT-PCR検査が実施されている。2021年3月1日~7月31日に227人が陽性となり、そのうち130人はワクチン接種2回完了しており、7人が接種1回のみ、90人が未接種だった。症状が見られたのは、接種2回完了者130人中109人(83.8%)、未接種者90人中80人(88.9%)であった。死亡者はおらず、入院は1人(ワクチン未接種)だった。
ワクチン有効性を月別にみると、3~6月は90%を超えていたが、7月は65.5%(95%信頼区間[CI]:48.9~76.9)に急激に低下した。7月の発症率をワクチン接種完了月で分けて算出すると、1~2月に接種完了した職員の1,000人当たりの発症率は6.7(95%CI:5.9〜7.8)、3~5月に接種完了した職員では3.7(95%CI:2.5〜5.7)で、1~2月に完了した職員のほうが高かった。なお、ワクチン未接種者の7月の発症率は16.4(95%CI:11.8~22.9)だった。
著者らは、6月から7月にかけてのワクチン有効性の大きな減少はデルタ変異株の出現と免疫力低下の両方が原因で、カリフォルニア州でのマスク着用義務の終了とそれによるコミュニティでの曝露リスク増大により悪化した可能性を指摘し、「この結果は、回避可能な疾患や死亡を防ぎ、社会の混乱を回避するために、ワクチン接種の拡大のほか、屋内でのマスク着用や集中的な検査をすぐに復活させることの重要性を強調している」とまとめている。
(ケアネット 金沢 浩子)