米国・メリーランド大学のO' Mareen Spence氏らは、小児における抗うつ薬治療開始後最初の6ヵ月間の抗うつ薬の投与量を調査し、その投与量と他の向精神薬による増強との関連について評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2021年9月16日号の報告。
対象は、米国の商業保険患者に関する包括的なデータベースであるIQVIA PharMetrics Plusを用いて特定された、2007年1月~2015年6月に新規で抗うつ薬治療を開始した3~18歳のうつ病患者5,655例。新規抗うつ薬使用の定義は、治療開始前1年以内での抗うつ薬使用がないこととした。抗うつ薬治療開始6ヵ月間における投与量の推移は、潜在クラス成長分析を用いて分類した。アウトカムは、レジメンの変更(他の向精神薬による増強療法、他の抗精神病薬への切り替えの有無にかかわらず抗うつ薬の中止)とした。抗うつ薬治療開始前6ヵ月間に測定したベースラインの共変量は、人口統計学的要因、精神医学的併存疾患、医療サービスの利用であった。抗うつ薬の投与量の推移とレジメン変更とのオッズ比(OR)の算出には、多項ロジスティック回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬の投与量の推移は、以下の5つに分類された。
●急激な減量:897例(16%)
●ゆっくりと減量:1,029例(18%)
●最小用量で安定:1,397例(25%)
●最大用量で安定:1,783例(32%)
●高用量への増量:549例(10%)
・最小用量で安定した患者と比較し、急激な減量およびゆっくりと減量を行った患者では、抗うつ薬を中止する可能性が高かった。
【他の向精神薬への切り替え】
●急激な減量(OR:5.91、95%CI:3.23~10.80)
●ゆっくりと減量(OR:1.67、95%CI:1.04~2.68)
【すべての向精神薬中止】
●急激な減量(OR:6.64、95%CI:4.24~10.39)
●ゆっくりと減量(OR:1.62、95%CI:1.22~2.13)
・最大用量で安定および高用量への増量を行った患者は、他の向精神薬への切り替えよりも、治療を中止する可能性が低かった。
【どちらかの切り替え】
●最大用量で安定(OR:0.38、95%CI:0.24~0.61)
●高用量への増量(OR:0.30、95%CI:0.16~0.59)
【すべての向精神薬中止】
●最大用量で安定(OR:0.15、95%CI:0.12~0.20)
●高用量への増量(OR:0.02、95%CI:0.01~0.03)
著者らは「抗うつ薬治療開始6ヵ月間の抗うつ薬の投与量の推移は、他の向精神薬による増強療法に影響を及ぼしていることが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)