メンタルヘルスの問題と関連する自殺企図は、成人および小児において増加している。メンタルヘルスに問題を抱える患者が増加しているため、成人だけでなく小児においても向精神薬の使用が増加している。しかし、小児に対する向精神薬の使用は、潜在的な有害リスクと関連している可能性がある。米国・Le Bonheur Children's HospitalのKiley Hunter氏らは、米国中毒管理センター協会(AAPCC)の国立中毒データシステム(NPDS)に報告されたデータを用いて、小児に対する向精神薬使用の傾向とアウトカムについて、調査を行った。Clinical Toxicology誌オンライン版2021年7月1日号の報告。
2009~18年にAAPCCのNPDSに報告された18歳以下の小児のデータをレトロスペクティブにレビューした。非定型抗精神病薬、bupropion、buspirone、クロニジン、リチウム、メチルフェニデート、ミルタザピン、MAO阻害薬、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、トラゾドン、三環系抗うつ薬の単回投与について、調査を行った。
主な結果は以下のとおり。
・小児に対する向精神薬使用に関するNPDSへの報告は、10年間で35万6,548件であった。
・最も報告数が多かった薬剤はSSRI(34%)、次いで非定型抗精神病薬(17%)、メチルフェニデート(15%)であった。
・0~12歳では適応外使用が多かったが(79%)、13~18歳では適応に準じた使用が多かった(76%)。
・SSRI使用の68%の症例は、無症候性であった。
・クロニジンおよびbupropionの使用による臨床効果では、中程度(29%)から高度(25%)の割合が高かった。
・全体として以下29例の死亡が確認された。そのうち、19例(65%)は青年患者であった。
●非定型抗精神病薬:4例
●bupropion:10例
●リチウム:1例
●SNRI:1例
●SSRI:7例
●三環系抗うつ薬:6例
著者らは「小児に対する向精神薬の潜在的に有害な使用を防ぐために、予防戦略が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)