認知症は、日米で共通の問題であるが、医療システムの異なる両国における認知症診断に関するプライマリケア医の診療および今後の展望について、浜松医科大学の阿部 路子氏らが、調査を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月11日号の報告。
日本全国および米国中西部ミシガン州におけるプライマリケア環境において、半構造化面接および主題分析を用いて、定性的研究を実施した。参加者は、日米それぞれ24人のプライマリケア医(合計48人)。両群ともに地理的因子(地方/都市部)、性別、年齢、プライマリケア医としての経験年数が混在していた。
主な結果は以下のとおり。
・日米ともに、認知症診断に対し同様の診療を実施しており、認知症診断のベネフィットについての見解も一致していた。
・しかし、認知症診断を下す適切なタイミングについて違いが認められた。
・日本のプライマリケア医は、家族が介護サービスを受けるうえで問題が発生した場合に診断を下す傾向があった。
・米国のプライマリケア医は、健康診断で認知症をスクリーニングし、認知症の早期診断に積極的であり、事前指示書の作成などのために患者自身が意思決定可能な時期に診断を行えるよう努めていた。
・日米における認知症診断の適切なタイミングに関する見解は、認知症の患者および家族をサポートするために利用可能な医療または介護サービスの影響を受けていると考えられる。
著者らは「認知症診断は、日本では介護サービス利用に際して行われるのに対し、米国では早期介入や事前指示書の作成などのために行われている。プライマリケア医による認知症の早期診断を確立するための検査は、利用可能な検査および治療選択肢に一部のみ関連していた」としている。
(鷹野 敦夫)