腫瘍組織で多く発現するデルタ様リガンド3(DLL3)は、小細胞肺がん(SCLC)の治療標的として注目されている。このDLL3を標的とする半減期を延長した二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体であるtarlatamab(AMG757)は、がん細胞とT細胞を架橋し、さらにT細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する。進行または再発SCLCを対象とした第I相試験の結果から、tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果について、第62回日本肺癌学会学術集会において国立がん研究センター東病院の泉大樹氏が報告した。
BiTE抗体tarlatamabをSCLC患者66例に投与
・対象:プラチナベースの化学療法後に進行または再発したSCLC患者66例(PS 0~2)
・治療薬:tarlatamab 0.003~100mgを週2回投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性および忍容性、最大耐用量および推奨用量
[副次評価項目]PK特性、予備的な抗腫瘍効果
BiTE抗体tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果の主な結果は以下のとおり。
・66例中56例(85%)に治療関連有害事象(TRAE)が認められ、Grade 3以上のTRAEは18例(27%)に発現した。
・頻度の高いTRAEとしてサイトカイン放出症候群(CRS)が17例(44%)に発現したが、Grade 3以上のCRSは1例(2%)のみだった。次いで、発熱17例(26%)、疲労感11例(17%)などがみられた。
・TRAEにより3例(5%)の患者が治療を中止した。また、用量制限毒性(DLT)はGrade 5の非感染性肺炎が1例(0.3mg投与)とGrade 3の脳症が1例(100mg投与)にみられた。
・BiTE抗体tarlatamabの抗腫瘍効果については、64例中13例(20%)でconfirmed PRを示し、3mg投与例の36%、10mg投与例の30%、100mg投与例の27%がPRであった。SDは17例(27%)、病勢コントロールは37例(47%)に認められた。
・確定されたPRが得られるまでの期間の中央値は8.7ヵ月であった
なお、本試験は現在でも継続されている。
(ケアネット)