特発性肺線維症(IPF)は高率に肺がんを合併する。IPF合併肺がんの大きな問題はIPFの急性増悪であり、ときに急速な呼吸不全から致死的となる。しかし、IPF合併例は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の臨床試験のほとんどで除外されている。
ニンテダニブ+化学療法はIPF合併肺がんに対する治療オプションとなる
北九州市立医療センターの大坪孝平氏らは、IPF合併進行NSCLCに対し、ニンテダニブ+化学療法と化学療法単独を比較したJ-SONIC試験を、わが国の複数の臨床試験グループ間で行った。J-SONIC試験はIPF合併肺がんでは、世界初となる第III相無作為化比較試験である。
・対象:化学療法未施行のIPF合併進行NSCLC(IPF GAP stage I~II:%FVC50%以上、%DLco36〜79%)
・試験薬群:化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)3週ごと4サイクル+ニンテダニブ
・対照群:化学療法(同上)単独群 3週ごと4サイクル
・評価項目:
[主要評価盲目]IPF 無増悪生存期間(EPF)
[副次評価項目]全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存率(OS)、安全性など
IPF合併肺がんに対してニンテダニブ+化学療法と化学療法単独を比較したJ-SONIC試験の主な結果は以下のとおり。
・2017年5月~2019年2月に、全国72施設から243例が登録され、ニンテダニブ併用群(121例)と化学療法単独群(122例)に無作為に割り付けられた。
・主要評価項目のIPF EPF中央値は、化学療法+ニンテダニブ群で14.6ヵ月、化学療法群で11.8ヵ月、ハザード比(HR)は0.89(90%信頼区間[CI]:0.67~1.17)であった(p=0.24)。
・ORRはニンテダニブ+化学療法群69%、化学療法群56%であった(p=0.04)
・PFS中央値は、化学療法+ニンテダニブ群6.2ヵ月、化学療法群5.5ヵ月、HRは0.68(95%CI:0.50~0.92)、とニンテダニブ併用による改善を認めた。
・OSは非扁平上皮がんにおいて改善を示し、ニンテダニブ+化学療法群では16.1ヵ月、化学療法群では13.1ヵ月、HRは0.61(95%CI:0.40~0.93)であった。
・ニンテダニブ併用により発熱性好中球減少症や下痢、蛋白尿が多く認められたが、QOLは両群で差はなかった。
J-SONIC試験では主要評価項目は達成されなかったものの、ニンテダニブと化学療法の併用はIPF合併進行NSCLC(とくに非扁平上皮癌がん)に対する治療オプションとなるものと考えられる、と大坪氏は述べた。
(ケアネット 細田 雅之)