薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2022/03/24 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。 <添付文書に口腔内苦味の記載がある薬剤の一例> ・ニコチン(禁煙補助剤) ・フルボキサミンマレイン酸塩(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]) ・ラベプラゾールナトリウム(PPI) ・レバミピド(胃炎・胃潰瘍治療薬) ・レボフロキサシン水和物(ニューキノロン系抗菌薬) ・炭酸リチウム(躁病・躁状態治療薬) *そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 <添付文書に味覚障害の記載がある薬剤の一例> ・アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬・高尿酸血症治療薬) ・ジクロフェナクナトリウム(フェニル酢酸系消炎鎮痛薬) ・レトロゾール(アロマターゼ阻害薬・閉経後乳癌治療薬) ・ロサルタンカリウム(アンギオテンシンII受容体拮抗薬) *そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 <添付文書に味覚異常の記載がある薬剤の一例> ・アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬) ・アプレピタント(選択的NK1受容体拮抗型制吐薬) ・イリノテカン塩酸塩水和物(I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍薬) ・インスリンデグルデク[遺伝子組換え] ・リラグルチド[遺伝子組換え](持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合薬) ・エルデカルシトール(活性型ビタミンD3) ・オロパタジン塩酸塩(アレルギー性疾患治療薬) ・チアマゾール(抗甲状腺薬) ・テルビナフィン塩酸塩(アリルアミン系抗真菌薬) ・バルサルタン(選択的AT1受容体遮断薬) ・フェンタニル(経皮吸収型持続性疼痛治療薬) ・ボリコナゾール(トリアゾール系抗真菌薬) ・メトトレキサート(抗リウマチ薬/葉酸代謝拮抗薬) *そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 上記のような薬剤を服用している患者が症状を訴えた場合、まずは(1)原因薬剤の中止・減量を行うが、原疾患の治療上、中止などの対応ができない場合、または味覚障害を起こす可能性のある薬剤を複数服用して特定が困難な場合もある。そのような場合でも(2)亜鉛剤の補給[低亜鉛血症がある場合、味蕾の再生促進を期待して補給]、(3)口腔乾燥の治療などで唾液分泌を促進させる、(4)口腔掃除とケアで対応することが必要で、とくに(1)(2)は重要度が高いと記載されている。 <早期に認められる症状> 薬物性味覚障害は高齢者に多く、複数の薬剤を服用しており、また発症までの時間や症状もまちまちで、初期の症状を捉えることは困難なことが多い。初期症状を含め、よく訴える症状に以下のようなものがある。 1:味(甘・塩・酸・苦)が感じにくい 2:食事が美味しくない 3:食べ物の好みが変わった 4:金属味や渋味など、嫌な味がする 5:味のしないところがある 6:口が渇く <患者が訴えうる自覚症状> 1:味覚減退:「味が薄くなった、味を感じにくい」 2:味覚消失・無味症:「まったく味がしない」 3:解離性味覚障害:「甘みだけがわからない」 4:異味症・錯味症:「しょう油が苦く感じる」 5:悪味症:「何を食べても嫌な味になる」 6:味覚過敏:「味が濃く感じる」 7:自発性異常味覚:「口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる」 8:片側性味覚障害:一側のみの味覚障害 本マニュアルには医師、薬剤師などの医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応などが記載されている。 また、患者が読みやすいように、患者やその家族に知っておいてもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載してもいるので、ぜひ参考にしていただきたい。 (ケアネット 土井 舞子) 参考文献・参考サイトはこちら 医薬品医療機器総合機構(PMDA):重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 亜鉛欠乏症診療ガイドライン、味覚障害など症例別の治療効果が充実 医療一般 日本発エビデンス(2020/06/16) 第37回 味覚障害に対する亜鉛の有効性と必要用量は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】 論文で探る服薬指導のエビデンス(2020/05/28) 亜鉛ってなあに? 患者説明用スライド(2018/11/16) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet(2024/12/20) 慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA(2024/12/20) “Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)(2024/12/20) 切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024(2024/12/20) EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024(2024/12/20) 進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ(2024/12/20) 導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024(2024/12/20) 統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化(2024/12/20) SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ(2024/12/20) [ あわせて読みたい ] 医療マンガ大賞2021「命のバトン」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/03/17) 医業承継における「お宝物件」の探し方【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第37回(2022/03/14) 転職では「選ぶ側」だったのに…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第36回(2022/02/28) 医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(医師視点)ささき かずよ氏(2022/02/15) 「仲間は多いほうがいい!?」、それ開業ではNGかも!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第35回(2022/02/14) 医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)フクラアカリガエル氏(2022/02/04) 開業に浮かれ、契約書をきちんと確認しない医師が陥ったこと【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第34回(2022/01/24) 診療所の承継時、やってはいけない3つのNG行動【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第33回(2022/01/10) 譲れない条件は? 案件探しは「婚活」だ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第32回(2021/12/24) 1日の集患数がわかる?「診療圏調査」を信じて開業すると…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第31回(2021/12/13)