精神病性うつ病に関連する死亡率や併発する精神症状の影響に関するエビデンスは、非常に限られている。英国・オックスフォード大学のTapio Paljarvi氏らは、併発する精神症状を制御した精神病性うつ病の原因別死亡率を推定するため、本研究を実施した。その結果、精神医学的併存疾患を制御した後、重度のうつ病に関連する死亡リスクに対し、精神症状の著しい影響が認められた。著者らは、自殺やその他の外的原因による死亡を減少させるためにも、すべての重度うつ病患者に対し、迅速な治療および精神症状のモニタリング強化が求められると報告している。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。
本コホート研究では、フィンランドの全国健康レジスタより得られたデータを分析した。対象は、2000~18年に精神病性うつ病または重度の非精神病性うつ病と診断された18~65歳(診断時)のうち、統合失調症スペクトラム障害または双極性障害ではない患者。精神病性うつ病患者の原因別死亡率を、重度の非精神病性うつ病患者と比較した。死亡原因は、ICD-10で定義した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者数は、精神病性うつ病患者1万9,064例、非精神病性うつ病患者9万877例。
・フォローアップ期間は、最大18年であった。
・精神病性うつ病患者の死亡の約半数(1,199/2,188例)は、初回診断から5年以内に認められ、相対リスクが最も高かったのは、初回診断1年以内であった。
・精神病性うつ病患者は、非精神病性うつ病患者と比較し、初回診断5年以内のすべての原因による死亡(調整HR:1.59、95%信頼区間[CI]:1.48~1.70)、自殺(調整HR:2.36、95%CI:2.11~2.64)、死亡事故(調整HR:1.63、95%CI:1.26~2.10)のリスクが高かった。
(鷹野 敦夫)