国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。
PERFORM-Jでは、日本人うつ病外来患者518例を対象に、抗うつ薬治療開始後6ヵ月間の抑うつ症状、認知機能、社会的および就業的機能の重症度、QOLが評価された。本事後分析においては、20項目の評価尺度であるPDQ-D-20とPDQ-D-5との内的整合性および収束的妥当性を評価した。これらの測定値についての相関関係は、各時点および経時的に調査した。また、PDQ-D-5と、こころとからだの質問票(PHQ-9)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、数字符号置換検査(DSST)、EuroQol-5-Dimension-5-Level(EQ-5D-5L)、シーハン障害尺度(SDS)、Work Productivity and Activity Impairment(WPAI)質問票との相関関係の調査も行った。
主な結果は以下のとおり。
・PDQ-D-5スコアは、良好な内的整合性を示した。
・PDQ-D-5とPDQ-D-20の間には、各時点(相関係数:ベースライン時0.94、1ヵ月目0.94、2ヵ月目0.96、6ヵ月目0.96)および経時的(相関係数:0.92)に強い正の相関が観察された(すべてp<0.0001)。
・PDQ-D-5スコアとPHQ-9、MADRS、SDSスコアとの間には、正の相関が確認された。
・PDQ-D-5スコアとEQ-5D-5L、DSSTスコアとの間には負の相関が認められたが、その程度はさまざまであった。
・PDQ-D-5スコアと、欠勤に関する項目を除くすべてのWPAIサブスケールスコアとの間には、経時的に中程度の正の相関が認められた。
(鷹野 敦夫)