2017年に本邦でも使用可能となったクライオ生検は、従来の経気管支肺生検よりも大きく、かつ良質な検体が得られる手法である。しかし、末梢肺病変の診断率について、クライオ生検と従来法を直接比較した報告は、ほとんどないのが現状である。そこで、国立がん研究センター中央病院の古瀬 秀明氏らは、診断的気管支鏡検査を受けた患者のデータを後ろ向きに解析し、クライオ生検は従来法と比べて末梢肺病変の診断率が高かったことを報告した。本研究結果は、Lung Cancer誌2023年4月号に掲載された。
クライオ生検は従来法と比べて末梢肺病変の診断率が高いことが明らかに
末梢肺病変を有し、2015年10月~2020年9月までに診断的気管支鏡検査を受けた患者2,724例のデータを後ろ向きに解析した。クライオ生検を受けた患者492例(クライオ生検群)、従来の経気管支肺生検を受けた患者2,232例(従来法群)について、傾向スコアマッチングを行い、各群481例を比較した。
クライオ生検と従来法を末梢肺病変の診断率について比較した主な結果は以下のとおり。
・傾向スコアマッチング後の診断率は、従来法群が77.6%であったのに対し、クライオ生検群は89.2%であり、有意に高率であった(オッズ比[OR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.65~3.38、p<0.001)。
・傾向スコアを用いた層別化(OR:2.35、95%CI:1.71~3.23)、回帰分析(OR:2.54、95%CI:1.83~3.52)においても、クライオ生検の診断における有用性が示された。
・サブグループ解析において、とくに中葉舌区、右/左下葉の病変、すりガラス陰影、胸部X線検査で検出できない病変について、クライオ生検の診断における有用性が示された。
・Grade2および3の出血の発現率は、従来法群がそれぞれ10.2%、0.8%であったのに対し、クライオ生検群ではそれぞれ38.0%、1.5%と有意に高率であった(p<0.001)。Grade4の出血はクライオ生検と従来法のいずれの群にも認められなかった。
著者らは、「クライオ生検は従来法と比べて末梢肺病変の診断率が高いことが明らかになった。ただし、クライオ生検は出血リスクが増加するため注意が必要である」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)