30年間のADHD実態調査~世界疾病負担研究の再分析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/10/06

 

 注意欠如多動症(ADHD)の罹患率、有病率、負担に関するデータは、臨床医、患者およびステークホルダーにとって非常に重要である。英国・サウサンプトン大学のSamuele Cortese氏らは、1990~2019年の世界および各国のADHD罹患率、有病率、負担を調査した世界疾病負担研究(GBD)のデータについて、再分析を実施した。その結果、GBDはADHDの罹患率、有病率、負担に関する時間的傾向、地理的傾向、性差の最も詳細なエビデンスを示しているが、ADHDの有病率および負担については過少評価している可能性が示唆された。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年9月8日号の報告。

 有病率のデータがない国については補完データを用いて推定したGBDとは対照的に、研究者らは実際に収集されたデータに基づいてADHDの有病率を算出した。ADHD関連死亡率に関する近年のメタ解析のエビデンスを踏まえ、GBDで推定されたADHDの負担を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・2019年にGBDが推定した、生涯にわたるADHDの世界の年齢標準化罹患率は0.061%(95%不確定区間[UI]:0.040~0.087)、有病率は1.13%(95%UI:0.831~1.494)であった。
・世界の精神疾患による障害調整生存年(DALY)のうち、ADHDは0.8%であり、死亡率はGBDにより0とされていた。
・1990年から2019年にかけて、世界の年齢標準化有病率は-8.75%、罹患率は-4.77%と減少していた。
・1990~2019年の期間に、罹患率、有病率、負担が最も増加していた国は米国であり、最も減少していた国はフィンランドであった。
・1990~2019年の罹患率、有病率、DALYは、女性よりも男性のほうが約2.5倍高かった。
・罹患率のピークは5~9歳、有病率およびDALYのピークは10~14歳であった。
・2013年以前のデータを再分析したところ、GBDの推定有病率(2.68%、95%信頼区間[CI]:1.83~3.72)と比較し、小児/青少年の有病率は2倍高かった(5.41%、95%CI:4.67~6.15)。なお、低所得国、中所得国、高所得国の間に有意差は認められなかった。
・メタ解析のエビデンスでは、不自然な原因によるADHD関連死亡率の有意な増加が認められた。

(鷹野 敦夫)