新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種は、COVID-19の重篤化を予防する。しかし、COVID-19罹患後症状を有する患者に対するCOVID-19ワクチン接種が罹患後症状や免疫応答、ウイルスの残存に及ぼす影響は不明である。そこで、カナダ・Montreal Clinical Research InstituteのMaryam Nayyerabadi氏らの研究グループは、COVID-19罹患後症状を有する患者を対象にCOVID-19ワクチンの効果を検討し、COVID-19ワクチンは炎症性サイトカイン/ケモカインを減少させ、COVID-19罹患後症状を軽減したことを明らかにした。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月15日号に掲載された。
研究グループは、COVID-19罹患後症状(世界保健機関[WHO]の定義※に基づく)を有する患者83例を対象とした前向きコホート研究を実施した。対象患者のCOVID-19ワクチン接種前後の罹患後症状数、罹患後症状を有する臓器数、心理的幸福度(WHO-5精神健康状態表[WHO-5]に基づく)を評価した。また、全身性炎症のバイオマーカーや血漿中のサイトカイン/ケモカイン量、血漿中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原量、SARS-CoV-2由来のタンパク質に対する抗体量なども評価した。本記事では、組み入れ時にCOVID-19ワクチン未接種であった39例を対象に、ワクチン接種前後に評価した縦断的解析の結果を示す。
※新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの。
主な結果は以下のとおり。
・COVID-19ワクチン接種前後のCOVID-19罹患後症状数(平均値±標準偏差[SD])は、ワクチン接種前が6.56±3.1であったのに対し、ワクチン接種後は3.92±4.02であり、有意に減少した(p<0.001)。また、罹患後症状を有する臓器数(平均値±SD)はワクチン接種前が3.19±1.04であったのに対し、ワクチン接種後は1.89±1.12であり、こちらも有意に減少した(p<0.001)。
・WHO-5スコア(平均値±SD)は、ワクチン接種前が42.67±22.76であったのに対し、ワクチン接種後は56.15±22.83であり、心理的幸福度が有意に改善した(p<0.001)。
・COVID-19ワクチン接種後において、16種類のサイトカイン/ケモカイン量がワクチン接種前と比較して有意に減少した。
・ワクチン接種前において、血漿中からSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質とヌクレオカプシド(N)タンパク質がそれぞれ17.9%(7/39例)、38.5%(15/39例)に検出されたが、ワクチン接種前後において、血漿中濃度に有意な変化はみられなかった。
・ワクチン接種前において、Sタンパク質、Nタンパク質、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体およびIgM抗体が検出された。ワクチン接種後において、Nタンパク質に対する血中のIgG抗体、IgM抗体の濃度が有意に減少したが、Sタンパク質、RBDに対する血中のIgG抗体の濃度は有意に増加した。
本研究結果について、著者らは「COVID-19罹患後症状を有する患者は、COVID-19罹患後症状に関連する炎症反応が亢進していることが示され、COVID-19ワクチン接種は炎症反応を低下させることによってCOVID-19罹患後症状を軽減させる可能性が示された。また、COVID-19罹患後症状を有する患者には、ワクチン接種とは関係なくウイルス産物が検出される患者が存在し、炎症の持続に関与している可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)