本邦では、男性40g/日以上、女性20g/日以上の純アルコール摂取量を生活習慣病のリスクを上昇させる飲酒量と定義している1)。しかし、この飲酒量で飲酒する人の割合を2019年と2010年で比較すると、男性では変化がなく、女性では有意に増加したと報告されている2)。そのため、さらなる対策が求められている。そこで、吉本 尚氏(筑波大学医学医療系 准教授)らの研究グループは、アルコール依存症の患者を除いた週4回以上の飲酒をする20歳以上の成人を対象として、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量を減らすことが可能か検討した。その結果、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量が減少し、提供期間終了後8週間においてもその効果が持続した。本研究結果は、BMC Medicine誌2023年10月2日号に掲載された。
本研究は、アルコール依存症の患者、妊娠中や授乳中の人、肝臓病の既往歴のある人を除いた週4回以上(飲酒日のアルコール摂取量の平均が男性40g以上、女性20g以上)の飲酒をする20歳以上の成人123人(男性54人、女性69人)を対象とした。対象を12週間にわたって4週間に1回(計3回、1回3ケースまで)ノンアルコール飲料が提供される群(介入群)、ノンアルコール飲料が提供されない群(対照群)に割り付け、前観察期間(4週間)、介入期間(12週間)、後観察期間(8週間)のアルコール摂取量などを検討した。
主な結果は以下のとおり。
・介入群に54人、対照群に69人が割り付けられた。
・介入期間の12週時点において、前観察期間と比較したアルコール摂取量の変化は、介入群-320.8g/4週、対照群-76.9g/4週であり、介入群が対照群と比較して有意に減少した(p<0.001)。
・後観察期間の8週時点(介入終了から8週後)においても、前観察期間と比較したアルコール摂取量は、介入群が対照群と比較して有意に減少していた(介入群-276.9g/4週、対照群-126.1g/4週、p<0.001)。
・介入群において、介入期間の12週時点におけるノンアルコール飲料の摂取量とアルコール摂取量に有意な負の相関が認められた(r=-0.500、p<0.001)。
本研究結果について、著者らは「介入群のみでノンアルコール飲料の摂取量とアルコール摂取量に負の相関が認められたことから、介入群ではアルコール飲料がノンアルコール飲料に置き換えられた可能性が考えられる」と考察し、「過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料の提供が有用であり、ノンアルコール飲料が減酒のきっかけになる可能性が明らかになった」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)