切除可能な局所進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められているが、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)において術後療法にニボルマブの上乗せを検証したATTRACTION-5試験では上乗せ効果は示されなかった。同じくG/GEJがん患者を対象として、術前術後の化学療法にペムブロリズマブの上乗せ効果を検証した無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-585試験においても、無イベント生存期間(EFS)に有意な延長はみられなかったことがすでに報告されている。本試験の詳細について、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。
・対象:未治療の局所進行、切除可能G/GEJがん、PS0~1
・試験群(メインコホート):術前にペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたはシスプラチン+5-FU)を3サイクル、術後にペムブロリズマブ+化学療法を3サイクル実施、さらにペムブロリズマブ単剤を最大11サイクル投与(ペムブロ群)
・対照群:術前・術後にプラセボ+化学療法、さらにプラセボ単剤投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)、EFS、全生存期間(OS)
[副次評価項目]安全性
主な結果は以下のとおり。
・804例が登録され、ペムブロ群とプラセボ群に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は47.7ヵ月だった。アジア人47%、欧米人26%、その他27%だった。
・pCR率はペムブロ群で12.9%(95%信頼区間[CI]:9.8~16.6)、プラセボ群で2.0%(95%CI:0.9~3.9)だった。
・EFSはペムブロ群で改善したが(中央値44.4ヵ月vs.25.3ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.99、p=0.0198)、わずかな差であったものの、事前に規定された有意差を示すには至らなかった。
・OS中央値はペムブロ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月で、有意差はなかった。
・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群で64%、プラセボ群で63%で発生した。
設楽氏は「未治療の局所進行切除可能G/GEJがん患者において、周術期のペムブロ+化学療法は残念ながらEFSに有意な改善はみられなかったが、pCR率は大幅に改善した。周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を確かめるためには、さらなる研究が必要だ」とした。
続いて発表された、本試験同様に胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬投与を検討するMATTERHORN試験(術前化学療法にデュルバルマブ上乗せ)がポジティブな結果となったことを踏まえ、発表後のディスカッションでは、差異が出た要因や適切な化学療法の種類、恩恵を受ける患者の特性などについて、盛んな議論が交わされた。
(ケアネット 杉崎 真名)