統合失調症は社会的機能不全を伴う精神障害であり、患者の労働時間の短縮などさまざまな課題を引き起こす。国立精神・神経医療研究センターの伊藤 颯姫氏らは、精神科医のガイドライン順守と統合失調症患者の労働時間との関連を調査した。統合失調症の薬物治療ガイドラインを精神科医がどの程度順守しているかを測定するため、本研究の研究者らは患者ごとの精神科医のアドヒアランスに関する治療適合度(individual fitness score:IFS)を最近開発した。しかし、精神科医のアドヒアランス向上が、労働時間などの患者の社会的機能アウトカムの改善にどの程度関連しているかは、依然としてよくわかっていなかった。Schizophrenia (Heidelberg, Germany)誌2023年11月7日号の報告。
自身が治療中の統合失調症患者に対する精神科医の統合失調症薬物治療ガイドライン順守と、同患者の労働時間との関連を評価するため、研究者らは統合失調症患者286例を対象に、IFSと社会的活動評価を用いてデータを収集し、IFS値と労働時間との相関関係を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・精神科医のガイドライン順守は、統合失調症患者の労働時間との有意かつ正の相関を示した(rho=0.18、p=0.00215)。
・患者を治療抵抗性統合失調症(TRS)群(40例)と非TRS群(246例)に分類した場合、TRS群の多くで労働時間の短縮が認められた(1週間当たり0~15時間)。
・TRS患者を除外した後でも、非TRS患者における精神科医のガイドライン順守と患者の労働時間との間には正の相関が認められ、依然として有意なままであった(rho=0.19、p=0.00332)。
・ガイドラインで推奨されている薬物治療が実施されていた患者では、より長い労働時間が認められた。
結果を踏まえ、著者らは「統合失調症患者の機能的アウトカムを改善するためには、精神科医に対する広範な教育およびトレーニングが必要である可能性が示唆された」とまとめている。
(鷹野 敦夫)