妊娠を試みるために術後補助内分泌療法を一時的に中断する早期HR+乳がん患者を対象としたPOSITIVE試験において妊孕性温存と生殖補助医療について評価した結果、乳がん診断時に胚・卵子を凍結保存し、内分泌療法中断後に胚移植した場合の妊娠率が高いことが示された。体外受精を受けた患者に乳がんイベントの増加はみられなかった。メキシコ・Monterrey Institute of TechnologyのHatem Azim氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。
本試験では、妊娠希望で術後補助内分泌療法を一時的に中断しても、短期の乳がん再発リスクは増加しなかったことがすでに報告されている(追跡調査期間中央値41ヵ月)。今回は、副次評価項目である月経の回復、生殖補助医療利用について評価した結果が報告された。
・対象:術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStageI~IIIのHR+乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性
・方法:内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡
・評価項目:
[主要評価項目]乳がん無発症期間(BCFI)
[副次評価項目]妊娠、出産、母乳育児、月経の回復、生殖補助医療の利用、内分泌療法のアドヒアランス、無遠隔再発期間
主な結果は以下のとおり。
・主要評価項目の解析対象患者516例中、6ヵ月以上追跡した497例が副次評価項目の評価が可能で、うち368例が1回以上妊娠した。
・登録時に無月経だった273例のうち255例(93%)で月経が再開した。
・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、妊娠までの期間の短さと関連したのは若年齢(35歳未満)のみだった。12ヵ月後の累積妊娠率は、35歳未満64%、35〜39歳54%、40〜42歳38%だった。
・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、生殖補助医療のうち凍結保存胚移植のみが高い妊娠率と独立して関連し(オッズ比:2.41、95%信頼区間[CI]:1.75~4.95)、妊娠率は82%であった。
・3年BCFIイベント累積発生率は、診断時/登録前に胚・卵子凍結保存のための卵巣刺激を受けた女性で9.7%(95%CI:6.0~5.4)、受けなかった女性で8.7%(同:6.0~12.5)と同程度であった。
Azim氏は、「本試験は妊娠を希望する早期HR+乳がん患者における妊孕性温存と生殖補助医療を調査した最大規模の前向き試験である。これらのデータは、若年乳がん患者の不妊カウンセリングに最も重要だ」と述べた。
(ケアネット 金沢 浩子)