高齢者肺がんに対するアテゾリズマブの有用性(IMpower130・IMpower132統合解析)/ESMO Asia2023

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/28

 

 高齢者および腎機能が低下した非扁平非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、アテゾリズマブ+化学療法の有用性を評価した第III相試験の統合解析が示された。

 肺がん患者は高齢者が多くを占めるが、高齢進行NSCLCに対する第III相臨床試験は少ない。そのような中、75歳以上のNSCLC患者におけるアテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した事後解析が、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2023)で発表された。

 この探索的研究は、非扁平NSCLCにおけるアテゾリズマブ+化学療法を評価した第III相試験であるIMpower130試験とIMpower132試験の統合解析から、75歳以上の患者を抽出したものである。75歳以上の生存ベネフィットと共に、腎機能による評価が試験ごとに行われた。有効性評価は1,181例、安全性評価は1,202例で行われ、75歳以上は131例(アテゾリズマブ含有群80例、化学療法群51例)であった。

 主な結果は以下のとおり。

<75歳以上の生存成績、全集団との比較>
・解析全集団の無増悪生存期間(PFS)中央値はアテゾリズマブ+化学療法群7.2ヵ月、化学療法群5.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.54〜0.71)、75歳以上ではそれぞれ8.4ヵ月と7.1ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.40〜0.88)であった。
・解析全集団の全生存期間(OS)中央値はアテゾリズマブ+化学療法群18.6ヵ月、化学療法群13.9ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.68〜0.95)、75歳以上ではそれぞれ28.2ヵ月と15.9ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.39〜1.07)であった。
・解析全集団の奏効率はアテゾリズマブ+化学療法群57.6%、化学療法群40.3%、75歳以上ではそれぞれ58.8%と39.2%であった。

<腎機能と生存成績:試験(レジメン)ごとの比較>
[IMpower130:アテゾリズマブ+カルボプラチン+nabパクリタキセル(CnP)]
・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+CnP群のPFS中央値は7.0ヵ月、CnP群5.6ヵ月(HR:0.64、95%CI:0.53〜0.78)、45≦CCr<60ではそれぞれ7.0ヵ月と2.9ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.25〜0.86)、CCr<45ではそれぞれ8.3ヵ月と6.1ヵ月(HR:0.49、95%CI:0.16〜1.52)であった。
・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+CnP群のOS中央値は18.6ヵ月、CnP群14.2ヵ月(HR:0.80、95%CI:0.64〜1.01)、45≦CCr<60ではそれぞれ19.9ヵ月と7.5ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.32〜1.37)、CCr<45ではそれぞれ29.8ヵ月と13.9ヵ月(HR:0.44、95%CI:0.11〜1.80)であった。
[IMpower132:アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド(PP)]
・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+PP群のPFS中央値は8.1ヵ月、PP群5.2ヵ月(HR:0.61、95%CI:0.50〜0.76)、45≦CCr<60ではそれぞれ6.9ヵ月と7.1ヵ月(HR:0.60、95%CI:0.32〜1.13)であった。
・CCr≧60mL/minにおけるアテゾリズマブ+PP群のOS中央値は18.8ヵ月、PP群13.6ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.64〜1.08)、45≦CCr<60ではそれぞれ13.7ヵ月と16.5ヵ月(HR:1.12、95%CI:0.52〜2.43)であった。

<安全性>
・Grade≧3の治療関連有害事象(TRAE)は、アテゾリズマブ含有群67.9%、化学療法群50.4%、75歳以上ではそれぞれ70.4%と62.7%で発現した。

 この統合解析では、アテゾリズマブ+化学療法の生存ベネフィットは、75歳以上でも全体集団と同等に維持される結果となった。TRAEについては、アテゾリズマブ+化学療法群、化学療法単独群とも75歳以上で増加している。腎機能低下例(CCr<60mL/min)に対する生存ベネフィットは、アテゾリズマブ+CnP群では全集団と同等に維持されたが、アテゾリズマブ+PP群では一貫した結果は得られなかった。

(ケアネット 細田 雅之)