RET融合遺伝子は主に非小細胞肺がん(NSCLC)や甲状腺がんにみられるが、それ以外のがん種でもまれではあるものの認められることがある。RET受容体型チロシンキナーゼ阻害薬セルペルカチニブは、本邦ではRET融合遺伝子陽性のNSCLCおよび甲状腺がん、RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がんにおける治療薬として用いられている。セルペルカチニブは脳転移を有するNSCLC患者において良好な頭蓋内奏効を示し1)、肺がん・甲状腺がん以外のRET融合遺伝子陽性の進行固形がんでも、有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている2)。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、国際共同第I/II相バスケット試験(LIBRETTO-001)の肺がん・甲状腺がん以外の患者を対象とした最新の解析結果を報告した。
LIBRETTO-001試験は、RET融合遺伝子陽性の進行・転移固形がん患者を対象とした国際共同第I/II相非盲検バスケット試験で、用量漸増パートと用量拡大パートから構成されている。用量拡大パートでは、セルペルカチニブ160mgを1日2回経口投与した。本解析は、肺がん・甲状腺がん以外の固形がん患者55例(有効性解析対象集団は52例)が対象となった。主要評価項目は独立判定委員会(IRC)評価に基づく奏効割合(ORR)で、副次評価項目は治験責任医師評価に基づくORR、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性であった。
主な結果は以下のとおり。
・有効性解析対象集団の年齢中央値は54.0歳(範囲:21~85)、前治療歴なしが9.6%、1~2ラインが61.5%、3ライン以上が28.8%であった。
・有効性解析対象集団におけるがん種は16種類で、膵がんと大腸がんが最も多かった(いずれも13例[25.0%])。そのほかは唾液腺がん4例(7.7%)、肉腫、原発不明がん、胆管がん3例(5.8%)などであった。
・IRC評価に基づくORRは44.2%(CR:3例、PR:20例)で、日本人集団(11例)では63.6%(CR:2例、PR:5例)であった。膵がんでは53.8%、大腸がんでは30.8%であった。
・追跡期間中央値24.8ヵ月時点のPFS中央値は13.2ヵ月で、日本人集団では18.7ヵ月(追跡期間中央値33.1ヵ月)であった。
・DoR中央値は37.2ヵ月で、日本人集団では17.3ヵ月であった。
・追跡期間中央値33.2ヵ月時点のOS中央値は18.0ヵ月で、日本人集団では18.7ヵ月(追跡期間中央値34.4ヵ月)であった。
・多く認められた有害事象(30%以上に発現)は、ALT上昇(45.5%)、AST上昇(36.4%)、下痢(32.7%)、口渇(32.7%)、高血圧(30.9%)であった。
・安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。
本研究結果について、大江氏は「セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性の固形がん患者において、持続的な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性を示した。日本人集団の有効性・安全性は全体集団と同様であった。RET融合遺伝子などのactionableな遺伝子異常を同定するためには、全がん種でCGP検査を実施することが重要である」とまとめた。
なお、セルペルカチニブのRET融合遺伝子陽性固形がんへの適応追加について、日本イーライリリーが厚生労働省へ承認申請中である。
(ケアネット 佐藤 亮)