閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、日本人での有効性・安全性明らかに(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/12

 

 閉塞性肥大型心筋症におけるfirst-in-classの選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、2022年に米国において、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の症候性閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の運動耐容能および症状改善の適応で承認されている。今回、北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2において、日本人の症候性肥大型心筋症(HCM)患者を対象にmavacamtenの有効性、安全性などを調査した第III相非盲検単群試験HORIZON-HCM(NCT05414175)の結果を報告した。

 本研究は、日本人の症候性HOCM患者を対象にmavacamtenを30週間投与したときの有効性、安全性および忍容性、ならびにmavacamtenの長期的影響を評価すること目的に実施された。適格患者は、NYHA心機能分類II/III、左室駆出率(LVEF)≧60%、安静時または誘発時の左室流出路(LVOT)最大圧較差50mmHg以上を有する18歳以上の成人であった。主な除外基準は、スクリーニング前6ヵ月以内の侵襲的中隔縮小治療(外科的筋切除術または経皮的alcohol septal ablation[ASA])の既往あるいは予定を有する、閉塞性HCMに似た心肥大を引き起こす既知の浸潤性または蓄積性障害を有するなど。患者介入方法はmavacamtenを 2.5mgで治療を開始し、ドプラ心エコー法に基づいて、6週目(1mg、2.5mg)、8週目(1mg、2.5mg、5mg)、14週目(1mg、2.5mg、5mg、10mg)、20週目(1mg、2.5mg、5mg、10mg、15mg)と、各タイミングでいずれかの用量を1日1回経口投与した。主要評価項目はベースラインから30週目までの運動負荷後のLVOT最大圧較差の変化量。副次評価項目は、ベースラインから30週目までカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量など。

 主な結果は以下のとおり。

・全38例のうち、30週の投与が可能であった36例を解析した。
・1次分析は、全参加者の第30週目の来院完了または第30週より前に治療を終了したときに行われた。
・参加者の内訳として、平均年齢±SDは64.8±10.95歳、女性25例(65.8%)であった。NYHA機能分類はクラスIIが33例(86.8%)でクラスIIIが5例(13.2%)、KCCQ-CSSの平均±SDは79.1±20.8ポイント、NT-proBNP±SDは1,029.0±525.0ng/L(四分位範囲[IQR]:1,657.0)であった。
・30週時点でのmavacamten投与量は5mg、10mgが最も多く(各10例[26.3%])、次いで2.5mg(6例[15.8%])であった。
・主要評価項目であるベースラインから30週目までの運動負荷後のLVOT最大圧較差の変化量は-60.7mmHg(95%信頼区間[CI]:-71.5~-49.9)だった。
・KCCQ-CSSの変化量は6週目まで急速な改善をもたらし、その後も12週目まで変化がみられた。実際にベースライン時点のNYHA機能分類はクラスIIは33例、クラスIIIは5例だったのに対し、30週時点ではクラスIIは14例、クラスIは22例に改善していた。
・30週時点での治療下での有害事象(TEAE)は24例(63.2%[軽度:14例、中等度:10例])で、本薬剤が関連した患者は1例(2.6%)、重篤なTEAEや死亡はなかった。

 以上の結果から、北岡氏は「日本人の症候性HOCMにおいてもmavacamtenの有効性が証明され、LVOT最大圧較差、NYHA心機能分類、KCCQ-CSSのほか、NT-proBNPやcTnT、心リモデリングなどの改善を認めた。そして、忍容性も高いことが示されるなど、これまで世界各国で行われた臨床試験と同様の結果が得られた」と締めくくった。

※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2024年3月12日10時)

(ケアネット 土井 舞子)