多くの場合、自殺には、原因となる精神疾患が関連している。うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図のリスク因子は、十分に明らかとなっているとは言えない。中国・北京大学のLin Chen氏らは、うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図の発生率および臨床的リスク因子を評価するため、本研究を実施した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年3月号の報告。
対象は、中国の精神保健施設13施設より登録されたうつ病診断患者1,487例。うつ病と診断された双極性障害患者を特定するため、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いた。対象患者の社会人口統計学的および臨床的データを収集した。MINIを用いて、自殺企図を有する患者を特定した。
主な結果は以下のとおり。
・双極性障害患者の20.6%は、うつ病と診断されていた。
・うつ病と診断された双極性障害患者の26.5%に、自殺企図が認められた。
・これらの患者の特徴として、高齢、入院回数が多い傾向があり、非定型的特徴、精神症状、自殺念慮を伴う季節性うつ病エピソードの頻度が高い可能性が示唆された。
・高頻度のうつ病エピソードと抑うつ症状発現中の自殺念慮は、自殺企図の独立したリスク因子として特定された。
・うつ病と診断された双極性障害患者と自殺企図歴を有するうつ病患者との間に、社会人口統計学的および臨床的な有意な違いが確認された。
著者らは「双極性障害患者における正確な診断の重要性が示唆されており、とくに自殺行動に関連して、うつ病と診断された双極性障害患者とうつ病患者を特定し、適切な介入を行うことが重要である」としている。
(鷹野 敦夫)