シナジス、RSウイルス発症抑制で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/28

 

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジス」(一般名:パリビズマブ[遺伝子組換え])について、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児を新たに投与対象とする製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。

 RSウイルスは、乳幼児の気管支炎や肺炎を含む、下気道感染の原因となる一般的な病原体であり、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児に感染すると重症化しやすいとされている。シナジスは、これらの重症化リスクを有する乳幼児に対し発症抑制の適応としてすでに承認されている。

 今回の承認は、森 雅亮氏(聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授)が実施した医師主導治験の結果に基づく。シナジスの投与対象としてすでに承認されている疾患以外にも、その病態からRSウイルス感染症に対し慢性肺疾患と同等の重症化リスクが存在する疾患の存在が指摘されていた。そこで、日本周産期・新生児医学会が中心となり、関連学会である日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会、日本小児呼吸器学会および日本小児外科学会から要望を集めた結果、換気能力低下および/または喀痰排出困難によりRSウイルス感染症が重症化するリスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症または神経筋疾患を伴う乳幼児への追加適応が望まれていることがわかった。これらの疾患は国内推定患者数が少なく大規模臨床研究が困難であるため、医師主導治験が実施された。医師主導治験では、今回承認された疾患群における有効性、安全性、および薬物動態を検討し、いずれの疾患においてもRSウイルス感染による入院は認められなかった。

 本治験を率いた森氏は、「今回の承認の基となった治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、革新的な医薬品・医療機器の創出を目的とした臨床研究や治験のさらなる活性化を目的とした研究を推進する“臨床研究・治験推進研究事業”に採択されている。これまで薬事承認のなかった重症化リスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する患者に対して、ようやく臨床の場でシナジスを広く使用できることをうれしく思う」と述べている。

 松尾 恭司氏(アストラゼネカ 執行役員ワクチン・免疫療法事業本部長)は、「シナジスは、今まで日本においてRSウイルス感染症による重篤な下気道疾患の発症抑制に対する唯一の抗体薬として、多くの早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児の医療に貢献してきた。今回の承認により、これまでシナジスを投与できなかったハイリスクの乳幼児とそのご家族に対しても貢献できることを大変うれしく思う」としている。

(ケアネット)