特発性間質性肺炎の指定難病・診断基準改訂、外科的肺生検なしでも診断可能に/日本呼吸器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/15

 

 間質性肺疾患は、2022年の日本人の死因の第11位となっており1)、対策の必要な疾患である。特発性間質性肺炎(IIPs)は、特発性肺線維症(IPF)を代表疾患とする原因不明の間質性肺炎の総称で、国の指定難病となっている。2024年4月より、本疾患の厚生労働省の診断基準および重症度分類基準が改訂され、蜂巣肺を伴わないIPFやIPF以外のIIPsでも外科的肺生検なしで認定可能になるなど大きな変更があった。そこで、第64回日本呼吸器学会学術講演会のランチョンセミナーにおいて、千葉 弘文氏(札幌医科大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 教授)が診断基準および重症度分類基準の改訂のポイントを解説した。

外科的肺生検なしでも診断可能、iPPFEも認定可能に

 これまで、高分解能CT(HRCT)で蜂巣肺が認められるIPFを除き、IIPsの診断には外科的肺生検が必要であった。しかし、外科的肺生検は侵襲が大きく、IIPsの急性増悪の誘因の1つとして挙げられるなどリスクが高い。高齢であったり呼吸機能が低下していたりする患者では、外科的肺生検を行うことができず、指定難病の申請が不能となってしまうということがあった。そこで、このたびの改訂では蜂巣肺のないIPFやIPF以外のIIPsにおいても、外科的肺生検を実施せずに認定可能となった2,3)

 また、特発性胸膜肺実質線維弾性症(iPPFE)や分類不能型IIPsは『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き2022 改訂第4版』でIIPsの1つとして記載されているが、厚生労働省の診断基準に含まれていないという課題もあった。そこで、今回の改訂ではiPPFEの臨床診断基準が設定され、IIPsの診断基準の細分類に「iPPFE」群および「分類不能」群が追加された2,3)

6分間歩行時の最低SpO2が90%未満は安静時PaO2が良好でも重症度分類III度以上

 これまでの重症度分類では、動脈血液ガス検査で酸素状態が良好(安静時PaO2 80Torr以上)であれば、6分間歩行試験(6MWT)において低酸素状態であっても重症度分類I度に分類されていた。しかし、予後からみると、旧重症度分類I度のIPF患者の45%はGAPモデル(米国の重症度分類で、予後予測の指標となる)のStageIIまたはIII(肺移植の適応)に該当したことが報告されている4)。また、6MWTで低酸素状態となる重症度分類I度の予後は重症度分類III度の予後に相当するという研究結果も存在する5)。そこで、今回の改訂では安静時PaO2に基づく重症度分類がI度であっても、6MWTにおいて最低SpO2が90%未満であれば公費助成の対象となる重症度分類III度に認定されることとなった2,3)

 しかし、6MWTを多忙な外来のなかで日常的に実施することは難しい。そこで千葉氏は、1分間椅子立ち上がりテストの実施を提案した。この方法であれば、診察室の椅子で実施することができるという。また、この結果は6MWTの結果と非常によく相関することも知られている。この方法の実施タイミングと意義について、千葉氏は「われわれは、3ヵ月に1回などのフォローアップ時に1分間椅子立ち上がりテストを組み入れることで、日常生活における酸素化の悪化を診察室でつかむようにしている。指定難病の申請時に必要な6MWTにおいても、このテストによって最低SpO2が90%未満となることの予想が可能となり有用である」と述べた。

患者の難病の制度に関する情報源は主治医

 2023年10月に「間質性肺疾患を伴う指定難病:難病法・難病医療費助成制度に関する調査」を日本ベーリンガーインゲルハイムが実施している。この調査結果から、千葉氏は患者の声を紹介した。難病医療費助成制度を利用するうえでの課題として、「制度の変更に関する情報が入りにくい」「制度に関する情報が手に入りにくい」「制度がわかりにくい」という意見が多かった。情報源としては、主治医が圧倒的に多かった(制度利用者の7割超)。この結果を踏まえて、千葉氏は「今回の改訂の内容をしっかりと患者さんに伝えていただきたい。患者さんの生活に直結する制度の変更であるため、われわれもさまざまな手法を用いて情報を伝えていきたいと考えている」と述べた。

 最後に、本セミナーの座長を務めた須田 隆文氏(浜松医科大学 内科学第二講座 教授)が「今回の特発性間質性肺炎の診断基準および重症度分類の改訂は非常に大きなものである。これは、確実に患者さんへ適切な医療を届けることにつながるため、多くの先生方に周知いただき、ご対応いただけると幸いである」と述べ、セミナーを締めくくった。

(ケアネット 佐藤 亮)