アルツハイマー病は、60歳以上で多くみられ、認知症の中で最も多く、記憶力や認知機能を著しく損なう疾患である。世界におけるアルツハイマー病の患者数は2050年までに3倍になると予想されており、効果的な介入を開発することは急務とされる。アミロイドβを標的としたモノクローナル抗体であるレカネマブは、アルツハイマー病の進行抑制に期待される薬剤の1つである。ポジティブな臨床試験での結果は、患者に希望を与えており、疾患の理解と介入の可能性を拡大させるために進行中の研究を加速させる。エジプト・アレクサンドリア大学のKarim Abdelazim氏らは、知見のアップデートのために、レカネマブ10mg/kgにおける有効性および安全性に焦点を当て、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurological Sciences誌オンライン版2024年4月3日号の報告。
この包括的なアプローチは、現在の文献のギャップに対処し、研究格差の精査、今後の調査に導くことを目的とした。厳格な包括/除外基準を適用し、研究の詳細、参加者情報、介入の詳細を評価するため、Cochrane risk of bias toolを用いた。統計分析には、Rソフトウエアを用い、リスク比および平均差を算出した。また、不均一性と出版バイアスも評価した。
主な結果は以下のとおり。
・メタ解析では、アルツハイマー病における認知機能アウトカムに対するレカネマブ(10mg/kg隔週投与)の有意なポジティブな影響が確認された。
・研究全体では、ADCOMS、CDR-SB、ADAS-cog14スコアの一貫した低下が認められており、有効性に対する信頼区間は狭く、有意な不均一性が認められない薬剤であることが示唆された。
・治療薬との因果関係が否定できない副作用(TEAE)には、有意な差が認められなかったが、レカネマブと関連するアミロイド関連画像異常(ARIA)では、ARIA-E(アミロイド関連画像異常[脳浮腫や脳胞液の貯留])およびARIA-H(微小出血や脳表ヘモジデリン沈着)リスクの上昇がみられることがあり、臨床現場での慎重な安全性モニタリングの必要性が示唆された。
著者らは、「レカネマブの有効性は確認されているものの、レカネマブと関連するベネフィットとリスクとのバランスの取れた評価が求められるため、アルツハイマー病の認知機能改善に対してレカネマブを使用する際に、本報告は重要な洞察を与えるであろう」としている。
(鷹野 敦夫)