早期再発TN乳がんへのアテゾリズマブ上乗せ、予後を改善せず(IMpassion132)/ESMO BREAST 2024

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/20

 

 切除不能な局所進行または転移を有する早期再発トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、化学療法に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを上乗せした第III相IMpassion132試験の結果、PD-L1陽性患者においても予後が改善しなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca A. Dent氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。

 IMpassion130試験において、進行TNBCへの1次治療としてのアテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用療法は、PD-L1陽性患者の全生存期間(OS)を改善した。しかし、早期再発TNBCにおけるデータは限られている。そこで研究グループは、治験医師選択の化学療法にアテゾリズマブまたはプラセボを上乗せして、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続した場合の有効性と安全性を評価した。

・試験デザイン:第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験
・対象:アントラサイクリンおよびタキサンを含む早期TNBCの治療完了後12ヵ月以内に再発した手術不能な局所進行または転移を有するTNBC患者
・試験群(アテゾリズマブ群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1~14日目に1日2回経口投与、またはカルボプラチンAUC 2+ゲムシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1・8日目に静注)+アテゾリズマブ(1,200mgを21日ごとに静注)
・対照群(プラセボ群):上記の治験医師選択の化学療法+プラセボ
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性集団(SP142によるPD-L1発現状況が1%以上)におけるOS
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性
・層別化因子:選択された化学療法、内臓転移(肺、肝臓)の有無、PD-L1発現状況
※2018年1月からPD-L1が陰性でも陽性でも登録されたが、IMpassion130試験の結果により、2019年8月からはPD-L1陽性患者に限定された。

 主な結果は以下のとおり。

・合計594例が登録され、うちPD-L1陽性は354例(アテゾリズマブ群177例、プラセボ群177例)であった。
・両群の患者特性はバランスがとれていた。アテゾリズマブ群は年齢中央値48歳(範囲:23~77)、無病期間が6ヵ月未満であったのは66%、肺および/または肝転移ありは60%であった。プラセボ群はそれぞれ48歳(範囲:25~83)、69%、62%であった。両群ともに治験医師選択の化学療法としてカルボプラチン+ゲムシタビンが選択されたのは73%であった。
・追跡期間中央値9.8ヵ月時点で、アテゾリズマブ上乗せによるPD-L1陽性患者のOSの有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:0.93[95%信頼区間[CI]:0.73~1.20]、p=0.59)。
 -アテゾリズマブ群:OSイベント発生70%、OS中央値12.1ヵ月(95%CI:10.1~15.1)
 -プラセボ群:OSイベント発生72%、OS中央値11.2ヵ月(95%CI:9.0~13.3)
・PFS中央値は、アテゾリズマブ群4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.6)、プラセボ群3.6ヵ月(95%CI:3.4~4.2)で有意差は認められなかった(HR:0.84[95%CI:0.67~1.06])。
・未確定のORRは、アテゾリズマブ群40%(95%CI:32~48)、プラセボ群28%(95%CI:21~36)であった(群間差11%[95%CI:>0~22])。
・奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群6.6ヵ月(95%CI:4.6~8.0)、プラセボ群4.1ヵ月(95%CI:3.5~5.8)であった(HR:0.73[95%CI:0.48~1.11])。
・これらの結果は、PD-L1陰性集団を含む修正ITT集団でも同様の傾向にあった。
・安全性解析集団(587例)における有害事象の発現率は両群でおおむね同等で、新たな安全性シグナルは報告されなかった。

(ケアネット 森 幸子)