細菌および真菌感染症の罹患率や死亡率の現状と年次傾向について、市中感染と院内感染の観点から報告した研究はほとんどない。今回、千葉大学の高橋 希氏らが日本の全国保険請求データベースに登録された7千万例超の入院患者のデータを調べたところ、院内死亡率は院内感染のほうが市中感染よりも有意に高かったが、両群とも死亡率は低下傾向であることが示された。BMC Infectious Diseases誌2024年5月23日号に掲載。
著者らは、全国保険請求データベースから、2010年1月~2019年12月に入院し培養検査が実施され抗菌薬が投与された患者を抽出し、罹患率と院内死亡率の年次推移を患者の年齢で4群に分けて算出し評価した。
主な結果は以下のとおり。
・7,396万2,409例の入院患者のうち、市中感染は9.7%、院内感染は4.7%であった。これらの罹患率は両群とも経年的に増加する傾向にあった。
・感染症で入院した患者のうち、85歳以上では有意な増加(市中感染:+1.04%/年、院内感染:+0.94%/年、p<0.001)がみられたが、64歳以下では有意な減少(市中感染:-1.63%/年、院内感染:-0.94%/年、p<0.001)がみられた。
・院内死亡率は、市中感染より院内感染で有意に高かった(市中感染:8.3%、院内感染:14.5%、調整平均差:4.7%)。
・院内感染群は、臓器サポートや患者当たりの医療費が高く、入院期間も長かった。
・死亡率は両群で減少傾向が認められた(市中感染:-0.53%/年、院内感染:-0.72%/年、p<0.001)。
今回の日本の大規模請求データベースの解析から、とくに85 歳以上において市中感染と院内感染の両方で入院が増加傾向にあること、院内感染は高齢社会の入院患者にとって大きな負担となっていることが示された。
(ケアネット 金沢 浩子)