労働安全衛生法の改正に伴い、2015年より50人以上の労働者がいる事業所では、ストレスチェックの実施が義務化された。京都大学の川村 孝氏らは、ストレスチェックプログラムを用いた従業員の精神疾患による長期病欠の予測可能性を検討した。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌2024年5月1日号の報告。
対象は、2016〜18年に精神疾患の長期病欠を取得した大学職員。対象者と性別、年齢、職種が一致した職場に出勤している大学職員を対照群に割り当てた。57項目の質問票より得られたデータの分析には多変量回帰分析を用い、最終的に予測モデルを開発した。2019年に検証を行った。
主な結果は以下のとおり。
・本研究には、22大学(国立大学:19、私立大学:3)が参加し、2016〜19年度まで各年度で約4万500人(15万7,498人年)が参加した。
・病欠を取得した職員は723人(10万人年当たり459.1人)、精神疾患により死亡した職員は605人(83.7%)であった。そのうち、病欠前2年以内にストレスチェックに回答した205人(33.9%、自殺者2人含む)を対象に割り付けた。
・多変量回帰では、次の6項目が予測因子と特定され、これらを予測モデルに含めた。
【職場の方針に自分の意見を反映できる】オッズ比(OR):0.652、95%信頼区間(CI):0.868〜0.490
【イライラしたことがある】OR:0.559、95%CI:0.400〜0.783
【非常に疲れを感じたことがある】OR:1.799、95%CI:1.334〜2.426
【落ち着かないことがある】OR:1.580、95%CI:1.154〜2.163
【悲しいことがある】OR:1.590、95%CI:1.148〜2.202
【家庭生活に満足している】OR:0.627、95%CI:0.829〜0.475
・受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、0.768(95%CI:0.723〜0.813)であった。
・本結果は、検証サンプルでも同様であった。
著者らは「予測モデルのパフォーマンスは中程度であり、ストレスチェックプログラムのさらなる改良が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)