統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及が睡眠薬処方に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2024/06/27

 

 信州大学の中村 敏範氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」が、日本における統合失調症およびうつ病に対する、精神科医による睡眠薬の処方や処方する睡眠薬の種類に及ぼす影響を調査した。これは、精神疾患の治療ガイドラインによる教育が、精神科医の睡眠薬処方に及ぼす影響を評価した、初めての研究である。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。

 EGUIDEプロジェクトは、日本における統合失調症とうつ病のエビデンスに基づく臨床ガイドラインに関する、全国的なプロスペクティブ研究である。2016〜21年にEGUIDEプロジェクト参加施設から退院した患者を対象に、臨床データと処方データを用いて、睡眠薬の処方状況を調査した。EGUIDEプロジェクトに参加している精神科医から処方された患者と参加していない精神科医から処方された患者における、睡眠薬の処方率および各タイプの睡眠薬の処方率を比較した。睡眠薬のタイプは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、非ベンゾジアゼピン受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬に分類した。EGUIDEプロジェクトが睡眠薬処方に及ぼす影響を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、統合失調症患者1万2,161例、うつ病患者6,167例。
・EGUIDEプロジェクトに参加した精神科医は、統合失調症患者およびうつ病患者に対し、睡眠薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率が有意に低かった(各々、p<0.001)。

 著者らは「EGUIDEプロジェクトは、睡眠薬の処方、とくにベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率削減に、重要な役割を果たしていると考えられる。本結果は、EGUIDEプロジェクトが治療行動の改善に寄与する可能性を示唆している」としている。

(鷹野 敦夫)