日本の精神疾患の治療では、メインとなる治療薬(たとえば、統合失調症に対する抗精神病薬、うつ病に対する抗うつ薬)に加えて向精神薬の多剤併用が一般的に行われている。北海道大学の橋本 直樹氏らは、施設間での差異を減少させながら、日本における向精神薬の処方を国際基準と一致させることを目的に、精神疾患患者の入院時および退院時の処方実態の比較を行った。BMC Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。
2016~20年の入院時および退院時における処方箋データを収集した。データに基づき患者を次の4群に分類した。A群(入院時および退院時:主薬単剤療法)、B群(入院時:主薬単剤療法、退院時:多剤併用療法)、C群(入院時および退院時:多剤併用療法)、D群(入院時:多剤併用療法、退院時:主薬単剤療法)。向精神薬の投与量および数を4群間で比較した。
主な結果は以下のとおり。
・統合失調症、うつ病のいずれにおいても、入院時に主薬単剤療法を行っていた患者は、退院時に主薬単剤療法を行っている可能性が高く、その逆も同様であった。
・統合失調症では、A群よりもB群において、多剤併用が行われることが多かった。
・処方がまったく変更されなかった患者は、10%以上であった。
結果を踏まえて著者らは、「ガイドラインに準拠した治療を確実に行うためには、多剤併用療法を減らしていくことが重要となる」とし、日本全国の270以上の精神科医療施設が参加する「EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)」の講義後、主薬による単剤療法率が上昇することが期待される、とまとめている。
(鷹野 敦夫)