ライフステージごとの運動で健康寿命の延伸を目指す/日医

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/02

 

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、運動・健康スポーツ医学委員会(委員長:津下 一代氏[女子栄養大学 特任教授])の「令和4・5年度の運動・健康スポーツ医学委員会答申」ならびに医師会としてスポーツ庁長官の室伏 広治氏へ要望書を提出したことを常任理事の長島 公之氏(長島整形外科院長)が説明した。

住民の健康寿命延伸は地域の多職種の連携で実現する

 今回の答申は、「『健康スポーツ医学実践ガイド』(2022年6月発行)と『運動・スポーツ関連資源マップ作成』を通じて促進する地域の多職種連携について」と題され、全国の医師会を中心に医師と他の医療職種と地域が協同して、運動やスポーツを通じ、住民の健康寿命の延伸を目指す取り組みを記している。

 とくに答申では、「学校医や産業医、かかりつけ医が運動について効果的に助言することが望ましい」とされ、「とくに慢性疾患を有する者に対しては、診察時に運動実施状況を確認し、助言、励まし、賞賛することが重要」としている。

 『健康スポーツ医学実践ガイドの活用』では、健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会や健康スポーツ医学実践講習会などにおける普及を念頭に活用が期待されている。また、「運動・スポーツ関連資源マップ作成」では、令和4年度にマップ実用化に向けた事業として、規模の異なる4都市(岩手県北上市、千葉県館山市、東京都狛江市、大分県)をモデル地域としてマップ作成の試行事業を実施した結果、課題として地域のキーパーソンによるところが大きいこと、助成終了後にも機能する仕組みがないと行政は着手しにくいことなどが説明された。今後、課題解決のため、運動施設の情報を自動更新にすること、大手スポーツクラブなどは本部などの中央から積極的に情報提供すること、患者(住民)個人を中心に支援者をひも付けし情報提供できるようにすることなど対策が提言されている。

 ライフステージ・対象別にみた運動については、下記のように課題と対策を述べている。

(1)子供たちなどの学校保健
 運動器検診により子供たちは、「運動過多」と「運動不足」で運動習慣が二極化している。運動器検診の実施では健康スポーツ医の参画や学校長のリーダーシップのもと、運動器の健康に興味を持ってもらうことが必要。

(2)勤労世代などの産業医が押さえておきたい健康スポーツ医学
 労働者では、身体活動量が低下することで起こる心身の不調が労働生産性の低下をもたらす。さらに業務範囲の拡大やメンタルヘルス不調により、労働経済にも悪影響を与える。疾病予防と生産性向上のため、労働環境の見直し、日常生活に密着した身体活動の向上が必要で、具体的には、休憩時間のストレッチ指導を組み入れることなど産業医からの提案も必要。

(3)高齢者など介護予防・リハビリテーションにおける地域連携
 身体不活動や運動不足は、非感染性疾患による死亡に影響する因子として、わが国では喫煙・高血圧に次いで3番目の危険因子とされている。国民に身体活動・運動の重要性が認知され、実践されることが健康寿命の延伸に必要である。そのため1次予防(健康増進、疾患予防)、2次予防(早期治療、重症化予防)、3次予防(再発防止)に、介護予防(フレイル対策、介護悪化抑制)を加えた横断的な健康作りの体制が必要。

 最後に「健康スポーツ医学実践ガイドのさらなる活用に向けた提言」として研修会・講習会の開催、実践ガイドの各項目に対応した動画の作成、新しいコンテンツの導入が記述され、「運動・スポーツ関連資源マップの作成について」の提言として、スポーツ医などの地域の医師会活動、スポーツ庁や厚生労働省への提言などが今後の取り組みとして記されている。

(ケアネット 稲川 進)