臨床現場で認知症やMCI患者のアドヒアランスは把握可能か

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/07/02

 

 多くの患者でみられるアドヒアランスの不良は、健康状態の悪化、QOLの低下、医療費の増大の原因となる。スペイン・Instituto CUDECA de Estudios e Investigacion en Cuidados Paliativosの氏Pilar Barnestein-Fonsecaらは、軽度認知障害(MCI)および認知症患者におけるアドヒアランス不良の割合を推定するため、錠剤カウントの参照法(RM)を考慮し、実臨床で有用かつ簡便な2つの自己報告法(SRM)の診断的妥当性を評価した。Frontiers in Pharmacology誌2024年5月22日号の報告。

 本コホートは、多施設ランダム化比較試験に組み込まれた。8施設より387例が、非確率的連続サンプリング法を用いて選択された。包括基準は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア20〜28点、55歳以上、薬物治療中、治療薬剤の自己管理とした。対象患者のフォローアップ調査は、ベースラインから6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月にわたり実施した。治療アドヒアランスに関連する変数は、フォローアップ期間の各ポイントで測定した。変数には、年齢、性別、治療、併存疾患、MMSE testを含めた。アドヒアランスには、錠剤数、SRMとしてのMorisky-Green test(MGT)、Batalla test(BT)を含めた。統計分析には、記述式分析および95%信頼区間(CI)を含めた。診断の妥当性には、SRMとRMのオープン比較統計的関連性、層別比較(アドヒアランス不良を評価するための最良の方法としてRM、κ値、感度、特異度、尤度比)を含めた。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者数387例の平均年齢は73.29歳(95%CI:72.54〜74.04)、女性の割合は59.5%であった。
・併存疾患は、HTAが54.4%、骨関節病変が35.9%、DMが24.5%であった。
・MMSE平均スコアは、25.57(95%CI:25.34〜25.8)であった。
・RMによる治療アドヒアランスは、ベースラインの22.5%から6ヵ月26.3%、12ヵ月14.8%、18ヵ月17.9%へ変動がみられた。
・SRMによる治療アドヒアランスは、ベースラインの43.5%から6ヵ月32.4%、12ヵ月21.9%、18ヵ月20.3%であった。
・κ値は各ポイントで、すべての比較において統計学的に有意であった(スコア:0.16〜0.35)。
・診断の妥当性に関する感度、特異度は、次のとおりであった。
【MGT】感度:0.4〜0.58、特異度:0.68〜0.87
【BT】感度:0.4〜0.7、特異度:0.66〜0.9
【MGT+BT併用】感度:0.22〜0.4、特異度:0.85〜0.96

 著者らは、「SRMは、アドヒアランス不良患者を正しく分類可能なツールであり、実臨床でも非常に使いやすく、結果もすぐに得られるため、MCIおよび軽度の認知症患者の服薬アドヒアランスの判定に使用可能である」としている。

(鷹野 敦夫)