がん患者さんの思い 浮き彫りに

千葉市にて、千葉県がん患者大集合2008が開催された。「千葉のがん医療を考える」と題し、アンサーパッドを用いた会場参加型のシンポジウムも行われた。現在あるいは過去に受けたがん診療に対するがん患者さんの思いが明らかにされるとともに医療者との意識差が垣間見られている。
「がん診療に満足」3割
まず、がん診療に対する安心度合いについて、がん患者とその家族267名に回答を求めた。その結果、「がん医療に満足している」は87名で33%。対象者の3割は満足していると答えたが、逆に7割は満足と答えなかった。
インフォームドコンセントの理解については、「医師の説明が良く理解できないことがあった」は117名と対象者の44%
半数弱が理解できないことがあったと回答した。
よく理解できなかった理由を、上記117名にたずねたところ、「医療用語が難しくて理解できなかった」が75名で70%「説明の時間が短くて理解できなかった」は93名で90%弱「精神的に余裕がなくて理解できなかった」は71名で70%弱
医療用語が難解であることも背景にあるが、それ以上に説明時間の短さが理解の障害要因として印象に残っているようである。
インフォームドコンセントの受け止め方について、患者さんと家族267名に尋ねたところ、
「副作用や合併症、後遺症の説明で不安になった」は144名で70%弱。
しかし、
「ごく稀にしか起こらない副作用、合併症、後遺症の説明も説明すべき」は199名と91%にのぼった。
不安ではあるが細かなことも話して欲しいのが患者さん、家族の心理であるようだ。
「十分な心のケアを受けていた」2割
心のケアについてがん患者さんと家族に尋ねた。その結果、「十分に心のケアのサポートを受けていた」と答えたのは47名で18%。
対象者の8割以上は十分な心のケアを受けていたとは回答しなかった。
また、がん相談窓口について尋ねたところ、「がんの相談窓口があることを知っていた」は93名29%
「相談窓口について担当医から説明を受けたことがある」は23名で9%
3割が相談窓口を知っていたが、ほとんどは担当医からの説明を受けていないことがわかった。
その他、「院内にがん体験者が相談にのる場があれば利用したい」、「同じような立場の人と話してみたいと思うことがある」、「院内に患者同士が交流する場があれば参加したい」は患者さん家族の70%以上であり、患者同士の相談交流への要求の高さが伺える。
医療者と患者の相互信頼
引き続き行われた、がん経験者の講演では次のように述べられた。病気そのものへの不安はなくせないが、診断治療を受ける際の不安は少なくできる。意味がわからない事からくる不安は大きいが、正体がわかってしまえば不安は軽減する。そういう意味でも医師の説明は重要である。
また、悪い知らせを聞くときは、医師の説明に気持ちがついて行かないことが多い。信頼できる人に付き添ってもらいメモを取ってもらうなどの工夫が必要。医師と患者の情報量の違いは明らかであり医療者には病気だけではなく、病気を持つ人を診て欲しい。しかし、患者もお任せにせず自分の病気を知ることが必要。そのようにして、医療者と患者の相互の信頼関係を築いてゆくべきである。
そして、乳がん体験者である耳鼻咽喉科医師小倉恒子氏が自身の体験を説明。今は副作用対策も進化し、自分自身は化学療法を受けていても社会生活に問題はない状態。医師は、重症であっても最期までがん患者を救って欲しいと述べた。
(ケアネット 細田雅之)
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