オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬などの新規睡眠薬の導入後、プライマリケア医による不眠症治療実態は、明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、日本のプライマリケア診療における不眠症の治療戦略を調査するため、Webベースのアンケート調査を実施した。BMC Primary Care誌2024年6月18日号の報告。
対象は、プライマリケア医117人。不眠症の各マネジメントオプションの精通度を2段階(精通していない:0、精通している:1)で評価し、不眠症のマネジメント法を9段階リッカート尺度(処方/実施したことがない:1、頻繁に処方/実施している:9)を用いて調査した。マネジメントオプションに精通していないと回答した医師は、処方/実施したことがないとみなした。
主な結果は以下のとおり。
・薬物療法に関しては、ほとんどのプライマリケア医が、新規睡眠薬に精通していると回答した。
・最も多く使用されていた睡眠薬はスボレキサントであり、次いでレンボレキサント、ラメルテオンであった。
・これら新規睡眠薬の9段階リッカート尺度は、入眠障害に対し平均4.8〜5.4ポイント、中途覚醒に対し平均4.0〜4.7ポイントであった。
・対照的に、多くのベンゾジアゼピン系睡眠薬は2ポイント未満であり、使用されることは少なかった。
・心理療法に関しては、認知行動療法(CBT-I)に精通しているプライマリケア医は、約40%であり、9段階リッカート尺度は平均1.5〜1.6ポイントと、ほとんど行われていなかった。
・CBT-Iと比較し、多くの医師はリラクゼーション、睡眠制限法、刺激制御法などに精通していると回答した。このようなプライマリケア医はCBT-Iをやや頻繁に実施し(48〜74%)、スコアは2.6〜3.4ポイントであった。
著者らは、「日本のプライマリケア医は、不眠症に対してCBT-Iをほとんど行っておらず、薬物療法に関しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬ではなく新規睡眠薬を使用する傾向にあった。日本のプライマリケア医による不眠症に対するCBT-Iの利用促進には、教育、簡易またはデジタルCBT-Iの導入、CBT-I専門医との連携構築などが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)