厚生労働省が2024年3月19日に公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果では、全国の医師数は34万3,275人で、前回調査(2020年)と比べて1.1%増加した。本調査では、前回調査時と比べて美容外科、アレルギー科、産科、形成外科などの診療科で医師数の増加がみられた。一方、気管食道外科、小児外科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などの診療科では医師数の減少がみられた(詳細は関連記事参照)。この結果には、ワークライフバランスや年収、やりがい、キャリアなどを含めた診療科への満足度が影響している可能性も考えられる。そこで、CareNet.comでは40~50代の医師1,005人を対象に、診療科への満足度に関するアンケートを実施した(2024年5月24~31日実施)。本アンケートでは、現在の診療科にどれだけ満足しているか、もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか、自身の診療科を医学生や自分の子供などに勧めるかを聞いた。
医師の約4分の3が現在の診療科に満足
現在の専門の診療科について満足度を聞いたところ、「非常に満足」が20.7%、「満足」が54.4%であった。これらを合わせると約4分の3(75.1%)が満足していた。一方、「非常に不満」は0.7%、「不満」は3.5%であり、現在の診療科への不満を有している医師は少ないことが明らかになった。これらの結果について、診療科別に大きな違いはみられなかった。
診療科を選び直せても現在の診療科を選ぶのは63.1%、人気は内科
次に、「もし医学生や研修医に戻れるとしたらどの診療科を選ぶか」を聞いた。その結果、「現在の診療科を選ぶ」と回答したのは63.1%であった。この割合は、皮膚科(76.3%)、救命救急科(73.5%)、精神科/心療内科(69.8%)、産婦人科(67.7%)、外科(67.7%)などで高かった。
また、「現在の診療科以外」を選択した371人について集計した結果、内科(12.9%)、皮膚科(7.3%)、放射線科(5.4%)、外科(5.1%)、美容外科(5.1%)が人気であった。医師は選ばないとの回答も2.7%あった。主な理由は以下のとおり。
【内科を選んだ理由】
・いろいろな症例がみられる(40代、精神科/心療内科)
・手術はしたくない(50代、循環器内科)
・開業を目指す(50代、腎臓内科)
・自分の健康に寄与するから(40代、小児科)
【皮膚科を選んだ理由】
・目に見えて効果がわかるから(40代、神経内科)
・開業もしやすい。ランニングコストが少ない(40代、腎臓内科)
・美容皮膚科に携わりたいから(40代、整形外科)
【放射線科を選んだ理由】
・放射線治療がますます進歩すると考えているから(50代、脳神経外科)
・主治医にならないから(40代、救命救急科)
・若いころに戻るならば、リモート診療、AIの発達に向けて動いてみたいと思えたから(40代、精神科/心療内科)
【外科を選んだ理由】
・なり手が少なく社会的な意義が高そう(40代、糖尿病・代謝・内分泌科)
・将来AIの台頭で、機械では代用できない技術が重宝されると思うため(40代、放射線科)
・外科に憧れがある(40代、消化器内科)
【美容外科/美容皮膚科を選んだ理由】
・健康な方をより元気にする科であるため(40代、総合診療科)
・保険診療はもう嫌(40代、内科)
・お金と時間がありそうなイメージ(40代、脳神経外科)
・美容に興味があるから(50代、精神科/心療内科)
自身の診療科を勧めるのは26.6%、勧めないのは18.3%
また、「医学生や自分の子供などに自身の診療科を勧めるか」を尋ねた。その結果、「強く勧める」が7.4%、「勧める」が19.2%であり、合わせて約4分の1(26.6%)が自身の診療科を勧めるという結果であった。一方、「強く勧めない」は5.3%、「勧めない」は13.0%であり、合わせて約5分の1(18.3%)は自身の診療科を勧めないという結果であった。
この結果を診療科別にみると、自身の診療科を勧める(「強く勧める」と「勧める」の合算)と回答したのは、内科系が31.9%と多い傾向にあり、外科系(23.9%)、産婦人科・小児科・救命救急科(21.9%)は少ない傾向にあった。外科系の診療科のなかでも、脳神経外科(6.3%)、外科(12.9%)、消化器外科(15.2%)などで少ない傾向にあった。
勧めない(「強く勧めない」と「勧めない」の合算)と回答したのは、内科系が13.4%と少ない傾向にあり、外科系(22.3%)、産婦人科・小児科・救命救急科(23.1%)は多い傾向にあった。こちらも外科系のなかで、脳神経外科(34.4%)、消化器外科(27.3%)、外科(22.6%)が多い傾向にあった。
アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
現在の診療科の満足度は?過去に戻れるならどの診療科を選ぶ?/医師1,000人アンケート
(ケアネット 佐藤 亮)