小児および青年における各抗精神病薬に対する生理学的反応の程度は、よくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMaria Rogdaki氏らは、神経精神疾患および神経発達障害を伴う小児および青年における各種抗精神病薬の生理学的変数への影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。The Lancet. Child & Adolescent Health誌2024年7月号の報告。
2023年12月22日までに公表された神経精神疾患および神経発達障害を伴う18歳未満の小児または青年を対象に抗精神病薬とプラセボを比較したランダム化比較試験(RCT)をMedline、EMBASE、PsycINFO、Web of Science、Scopusより検索し、ネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムは、体重、BMI、空腹時血糖、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、プロラクチン、心拍数、収縮期血圧(SBP)、補正QT時間(QTc)のベースラインから急性期治療終了までの平均変化とした。複数の用量で検討されたマルチグループ試験では、すべての用量について各生理学的変数のサマリ値を算出した。Kilimプロットを用いて、すべての治療とアウトカムの結果を要約し、p値を用いて、治療効果と統計学的エビデンスの強さに関する情報を評価した。異質性はτ、バイアスリスクはCochrane Collaborationバイアスリスク評価ツール、ネットワークメタ解析の信頼性はConfidence in Network Meta-Analysis(CINEMA)appで評価した。
主な結果は以下のとおり。
・スクリーニングした6,676件の研究より、47件のRCTをメタ解析に含めた。
・分析対象は、プラセボ群2,134例、抗精神病薬群4,366例、治療中央値は7週間(IQR
:6〜8)、平均年齢は13.29±2.14歳であった。
・抗精神病薬には、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、クロザピン、ハロペリドール、ルラシドン、molindone、オランザピン、パリペリドン、ピモジド、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidoneが含まれた。
・各主要アウトカムに対するプラセボと比較した抗精神病薬の平均変化差(95%信頼区間)は次のとおり。
【体重】−2.00kg(−3.61〜−0.39:molindone)〜5.60kg(0.27〜10.94:ハロペリドール)
【BMI】−0.70kg/m2(−1.21〜−0.19:molindone)〜2.03kg/m2(0.51〜3.55:クエチアピン)
【総コレステロール】−0.04mmol/L(−0.39〜0.31:ブロナンセリン)〜0.35mmol/L(0.17〜0.53:クエチアピン)
【LDLコレステロール】−0.12mmol/L(−0.31〜0.07:リスペリドン、パリペリドン)〜0.17mmol/L(−0.06〜0.40:オランザピン)
【HDLコレステロール】0.05mmol/L(−0.19〜0.30:クエチアピン)〜0.48mmol/L(0.18〜0.78:リスペリドン、パリペリドン)
【トリグリセライド】−0.03mmol/L(−0.12〜0.06:ルラシドン)〜0.29mmol/L(0.14〜0.44:オランザピン)
【空腹時血糖】−0.09mmol/L(−1.45〜1.28:ブロナンセリン)〜0.74mmol/L(0.04〜1.43:クエチアピン)
【プロラクチン】−2.83ng/mL(−8.42〜2.75:アリピプラゾール)〜26.40ng/mL(21.13〜31.67:リスペリドン、パリペリドン)
【心拍数】−0.20bpm(−8.11〜7.71:ziprasidone)〜12.42bpm(3.83〜21.01:クエチアピン)
【SBP】−3.40mmHg(−6.25〜−0.55:ziprasidone)〜10.04mmHg(5.56〜14.51:クエチアピン)
【QTc】−0.61ms(−1.47〜0.26:ピモジド)〜0.30ms(−0.05〜0.65:ziprasidone)
著者らは、「抗精神病薬に対し、小児および青年は、多様で臨床的に重要な生理学的反応を示す。さまざまな神経精神疾患および神経発達障害を伴う小児および青年の治療ガイドラインは、関連する代謝変化、プロラクチン変化、血行動態変化に関する各抗精神病薬の明確なプロファイルを反映するよう更新する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)