ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)に対し米国食品医薬品局(FDA)で初めて承認された治療薬である。アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの発生頻度は高く、患者および介護者にとって大きな負担となる。ブレクスピプラゾールの有効性、安全性、忍容性は、臨床試験により実証されている。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、動物実験におけるブレクスピプラゾールのアジテーション緩和作用の結果を報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年6月25日号の報告。
2つのアルツハイマー型認知症マウスモデルを用いて、ブレクスピプラゾールの効果を検討した。攻撃性試験であるレジデント・イントルーダーテストでは、5〜6ヵ月齢のTg2576マウスを用いて、テストの1時間前に溶媒またはブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)の経口投与を行った。自発運動活性測定試験では、6ヵ月齢のAPPSL-Tgマウスを用いて、測定開始前日の夕方に溶媒またはブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)を経口投与し、3日間測定した。
主な結果は以下のとおり。
・レジデント・イントルーダーテストでは、Tg2576マウスは、非Tgマウスと比較し、攻撃回数が有意に多く、初回攻撃までの期間がより短かった。
・Tgマウスでは、ブレクスピプラゾール(0.03mg/kg)投与により、初回攻撃までの期間が有意に延長し、攻撃回数の減少傾向が認められた。
・6ヵ月齢以上のAPPSL-Tgマウスと非Tgマウスをフェーズ(フェーズI:ツァイトゲーバー時間[ZT]12〜16、フェーズII:ZT16〜20、フェーズIII:ZT20〜24)ごとに比較したところ、APPSL-Tgマウスは、フェーズIIおよびフェーズIIIでの運動量が有意に高く、アルツハイマー型認知症における午後遅くにみられるアジテーションの臨床観察と相関していた。
・ブレクスピプラゾール(0.01または0.03mg/kg)投与により、APPSL-TgマウスのフェーズIIIでの過剰な運度の有意な減少が認められた。
著者らは「Tgマウスにおける攻撃行動の抑制、夜間の過剰な運度の減少は、ブレクスピプラゾールの臨床試験で実証されているように、アルツハイマー型認知症のアジテーションに対する治療効果を示唆するものである」としている。
(鷹野 敦夫)