体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。
研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。
主な結果は以下のとおり
・各年代のThermoFaceパターンを調べた結果、男女ともに鼻、頬、眉毛ゾーンの皮膚温が加齢とともに低下していた。ただし、女性は50代から、男性は60代から低下がみられた。
・また、皮膚温と代謝疾患との関連について、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患を有する人は健康な人に比べて目の周囲の皮膚温が高く、高血圧の人では頬の皮膚温が高かった。
・ThermoFaceは、脂肪肝などの代謝疾患を高い精度(AUC>0.80)で予測し、予測された疾患確率は代謝パラメータと相関していた。
・AgeDiffは、BMI、空腹時血糖値、アポリポ蛋白Bなどの代謝性疾患パラメータ、睡眠時間、血液検体のトランスクリプトーム解析によるDNA修復、脂肪分解、ATPaseなどの遺伝子発現経路との関連が高かった。
・サーマル画像の皮膚温分布は老化や代謝状態を反映しており、迅速なスクリーニングへの有効性が示された。
研究者らは、「顔のサーマル画像分析が加齢や代謝疾患の迅速な評価に有用であることを示しており、ThermoFaceはデータ取得の速さと利便性、大規模コホートに基づく精度の高さから、健康的な加齢に関するモニタリングや評価ツールとして有用な可能性がある」としている。
(ケアネット 土井 舞子)