日本では、高齢者の補聴器装着率が他の先進国より低いといわれている。このボトルネックを特定し、対策を講じることは重要である。広島市立広島市民病院の福増 一郎氏らは、難聴と認知症との関係についての認知向上が、聴力検査や補聴器装着に意義があるかを調査した。Auris Nasus Larynx誌2024年8月号の報告。
総合病院を受診した65歳以上の参加者を対象にアンケート調査を実施し、次の背景因子を調査した。
(1)最近の聴力検査歴
(2)耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を希望するか
(3)難聴と認知症との関係についての認知状況
(4)補聴器の装着について
主な結果は以下のとおり。
・参加対象患者は517例(平均年齢:78.06±6.97歳)、地域高齢者人口の2.4%を占めた。
・5年以内の聴力検査歴は、難聴と認知症との関係についての認知と有意な関連が認められた(調整済みオッズ比[aOR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.49〜3.72)。
・耳鼻咽喉科の診療または聴力検査の希望は、難聴と認知症との関係についての認知と有意な関連が認められた(aOR:1.70、95%CI:1.02〜2.85)。
・難聴と認知症との関連について認知していた人は、39.3%であった。
・有意な関連因子は、女性(OR:2.50、95%CI:1.64〜3.81)、対人関係の趣味(OR:1.66、95%CI:1.11〜2.49)であった。
・補聴器装着の有意な背景因子は、高齢(OR:6.95、95%CI:1.90〜25.40)、自己申告による重度の聴覚障害(OR:5.49、95%CI:2.55〜11.80)、独居(OR:2.63、95%CI:1.18〜5.89)であった。
・難聴と認知症との関連についての認知は、有意な因子ではなかった。
著者らは「難聴と認知症との関連についての認知を高めることは、自己申告による難聴に対する補聴器装着と関連が認められなかったが、耳鼻咽喉科への受診や聴力検査の希望とは関連している可能性がある。そのため、高齢者に対する聴力スクリーニングなどの手順も不可欠であろう」としている。
(鷹野 敦夫)