高齢者における難聴とうつ病との関連を報告した研究では、結果に矛盾がみられている。このことから、西オーストラリア大学のBlake J. Lawrence氏らは、関連エビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Gerontologist誌2020年4月2日号の報告。
MEDLINEなどの学術データベースの検索およびOpenGreyなどでの灰色文献の検索を行い、2018年7月17日までの関連記事を抽出した。横断的研究またはコホート研究を含めた。アウトカムの効果は、オッズ比(OR)として算出し、ランダム効果メタ解析を用いてプールした。
主な結果は以下のとおり。
・選択基準を満たした研究は35件(14万7,148例)であった。
・横断的研究が24件、コホート研究が11件であった。
・難聴は、高齢者におけるうつ病オッズの大きさと有意な関連が認められた(OR:1.47、95%信頼区間[CI]:1.31~1.65)。
・研究デザインで層別化した場合、横断的研究(OR:1.54、95%CI:1.31~1.80)およびコホート研究(OR:1.39、95%CI:1.16~1.67)のいずれにおいても、難聴はうつ病オッズの大きさと関連していた。また、研究デザイン間で、効果の推定値に差は認められなかった(Q=0.64、p=0.42)。
・難聴とうつ病の関連に対する補聴器の使用などのモデレーター変数の影響は認められなかったが、これらの調査結果は注意して解釈する必要がある。
・出版バイアスは認められなかったが、全体的な効果の推定値の確実性は「低」に分類された。
著者らは「高齢者では、難聴に関連するうつ病のオッズ増大がみられる可能性があり、この関連は、研究や研究参加者の特性による影響を受けないと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)