乳がん関連リンパ浮腫、日常生活の中のリスク因子

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/13

 

 乳がん治療後のリンパ浮腫を防ぐために、患者には日常生活における感染や外傷などのリスクを避けることが推奨されている。一方で日常生活の中のリスク因子が乳がん関連リンパ浮腫に及ぼす影響を検討したデータは不足している。米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMei Rosemary Fu氏らは、日常生活におけるリスクの発生状況および乳がん関連リンパ浮腫への影響を調べることを目的とした横断研究を実施し、結果をAnnals of Surgical Oncology誌オンライン版2024年8月1日号に報告した。

 本研究は、米国都市部のがんセンターで登録の3ヵ月以上前に急性期治療(手術、放射線治療、化学療法)を完了しており、転移、再発、またはリンパ系疾患の既往のない21歳以上の女性を対象に実施された。リンパ浮腫リスク軽減行動チェックリスト(The Lymphedema Risk-Reduction Behavior Checklist)を用いて、日常生活における11のリスク因子(感染症、切り傷/引っかき傷、日焼け、油はねまたは蒸気による火傷、虫刺され、ペットによる引っかき傷、爪のキューティクルのカット、重い荷物の運搬/持ち上げ、ショルダーバッグの持ち運び、食料品の持ち運び、ウェイトリフティング)の発生状況を評価。乳がん関連リンパ浮腫への影響を明らかにするために、記述分析、回帰分析、および因子分析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・567例のデータが収集・解析され、23.46%が乳がん関連リンパ浮腫と診断された。全体の52.73%は5つ超のリスク因子を経験していた。
・感染症(オッズ比[OR]:2.58、95%信頼区間[CI]:1.95~3.42)、切り傷/引っかき傷(2.65、1.97~3.56)、日焼け(1.89、1.39~3.56)、油はねまたは蒸気による火傷(2.08、1.53~3.83)、虫刺され(1.59、1.18~2.13)は乳がん関連リンパ浮腫と有意に関連していた。
・日常生活におけるリスク因子は、皮膚外傷と物の持ち運びに関連する要因に集約され、皮膚外傷リスクは乳がん関連リンパ浮腫と有意に関連していた(B=0.539、z=3.926、OR:1.714、95%CI:1.312~2.250、p<0.001)。
・皮膚外傷リスクが3つ、4つ、または5つある場合、乳がん関連リンパ浮腫の発症オッズはそれぞれ4.31倍、5.14倍、6.94倍に大幅に増加した。
・物の持ち運び関連のリスクは、乳がん関連リンパ浮腫の発症に有意な影響も増分的な影響も与えていなかった。

 著者らは、52.73%の人が5つを超えるリスク因子を経験していることを考慮すると、これらのリスクを完全に回避するのは難しいとし、“乳がん関連リンパ浮腫の日常生活リスクを最小限に抑えるための戦略”として、「日焼けを防ぐために日焼け止め(SPF30以上)を塗るか、長袖の服を着ましょう」「発疹、水疱、赤み、腕の熱感の増加、痛みなどに気づいた場合は、すぐに医師に相談しましょう」など16項目を提示している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)