乳がん遺伝子パネル検査の前向き研究、推奨治療到達率は?(REIWA study)/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/15

 

 転移・再発乳がんにおけるがん遺伝子パネル検査の有用性を評価する前向き観察研究であるREIWA study(JBCRG C-07)の中間解析結果をもとに、乳がん治療におけるゲノム医療の現状や問題点、今後の展望を東北大学病院の多田 寛氏が第32回日本乳癌学会学術総会のシンポジウムで発表した。

 標準治療が終了した進行・再発乳がん患者を対象に、2019年6月からがん遺伝子パネル検査が保険で利用できるようになった。本研究では、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(F1CDx)およびFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル(F1LCDx)を行うことが決定したde novo StageIVまたは転移・再発乳がん患者を2020年1月~2023年7月に前向きに登録し、変異情報、変異にマッチした治療の情報、後治療、予後などの項目を現在も収集している。主要評価項目は遺伝子変異に対応する治療(推奨治療)が存在した集団における推奨治療が施行された割合、および推奨された治験や臨床試験に参加した割合であった。本シンポジウムでは、第2回の中間解析時点の結果やがんゲノム情報管理センター(C-CAT)の乳がん症例データをもとに、転移・再発乳がんに対するゲノム医療の現状と問題点、今後の展望についての考察が示された。

 主な内容は以下のとおり。

・解析対象は576例で、Luminalタイプが310例(53.8%)、HER2タイプが93例(16.1%)、トリプルネガティブタイプが173例(30.0%)であった。年齢中央値は56歳(50歳以上が70.1%)、再発は74.1%、再発後の治療レジメン数中央値は3レジメン、F1CDxが選択されたのは85.2%であった。F1LCDxが選択された群では50歳以上の割合が多く、再発後の治療レジメン数も多かった。
・推奨治療が提示された割合は61.0%(350/574例)で、複数の推奨治療が提示されたのは23例であった。
・全体において、推奨治療(主治医判定)が実際に施行されたのは18.1%(104/574例)であった。
・HER2タイプに対する抗HER2療法など既知のものを除くと、治療到達率は13.8%(78/574例)であった。F1CDx群では14.1%(69/489例)、F1LCDx群では11.8%(10/85例)であった(p=0.543)。
・主要評価項目である推奨治療が存在した集団における推奨治療が施行された割合は29.7%(104/350例)、推奨された治験や臨床試験に参加した割合は4.0%(14/350例)であった。
・治験以外の推奨治療の内訳(n=79)は、免疫チェックポイント阻害薬が29.1%、mTOR阻害薬が21.6%、抗HER2療法が20.2%、PARP阻害薬が13.9%、NTRK阻害薬が5.1%、CDK4/6阻害薬が3.8%、SERDが2.5%、その他が2.5%であった。
・F1LCDxを選択した理由(n=85)は、「組織の保存期間が長い」が49.4%、「生検による組織検体の採取が困難」が32.9%、「組織標本は得られたが解析が困難であった」が24.7%、「遺伝子変化の状態をよりよく理解することができる」が8.2%であった。
・F1CDx/F1LCDx後の治療の選択理由は、「actionableな遺伝子変異がなく承認薬を施行した」が1stラインでは26%、2ndラインでは19.5%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治療を施行した」が13.5%/4.3%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治験・臨床試験に参加した」が1.9%/1%、「actionableな遺伝子変異があったが対応しない承認薬を施行した」が25.7%/20%であった。

 多田氏は、C-CATについては、「遺伝子変異状況や推奨治療の予測にはC-CATのような大規模なデータベースが有用と考えられる。C-CATの乳がん症例における入力ベースの推奨治療到達率は9.7%であったが、推奨治療薬の薬剤名の未入力が多く、また標的治療に殺細胞性抗がん剤が入力されているなど、入力内容の不十分さが散見される」と見解を示した。

 最後に、「REIWA studyは治療歴や予後情報などがクエリ作業のもとに正確に入力されており、転移・再発乳がんにおけるゲノム医療の貴重なデータとなる。今後、全生存期間や個々の標的治療の治療効果を含めた副次評価項目の解析を行い、がん遺伝子パネルの有用性を正確に評価していく」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)