アストラゼネカは、肝細胞がん(HCC)患者を対象に、治療実態と生活への影響を調査し、2024年7月にその結果を発表した。調査は全国47都道府県に住む173例のHCC患者を対象とし、2024年4月22日~5月7日に実施された。
アンケートの概要
全国47都道府県に住むHCCと診断されたことのある患者173例(B型またはC型肝炎の罹患歴あり:76例、なし:91例、不明:6例。男性89%、平均年齢66歳)。2010年以前にはB型C型肝炎罹患歴「あり」の患者の割合が74%であったのに対し、2011~20年には約半数となり、2021年以降は26%にまで減った。
初回治療の選択とその結果
・過去10年以内に診断を受けた患者が80%を占めており、初回治療として最も多く選ばれたのは肝切除(開腹手術または腹腔鏡手術)で54%の患者が選択した。B型またはC型肝炎の罹患歴がない患者は、ある患者に比べて初回治療に薬物治療を選ぶ割合が高かった(24%対3%)。
・初回治療から2次治療までの期間は、肝切除を受けた患者は平均32.8ヵ月だったのに対し、薬物治療を選択した患者は11ヵ月と短かった。
就労への影響と治療の負担
・診断時に就労していた患者は6割で、うち半数が「仕事への影響があった」と回答した。「仕事への影響があった」と回答した人のうち44%が休職、11%が退職を経験していた。とくに薬物治療を受けた患者では7割が「日常生活に治療の影響があった」と回答した。
・治療に伴う入院率は初回治療~4次治療を通じて75%以上となり、治療が患者の社会生活や経済活動に大きな支障となっていることが確認された。
・治療開始後の体調変化としては「疲れやすい、体がだるい」が34%と最多で、次いで「食欲の増加・低下」が20%、「発熱」が16%だった。
医療従事者とのコミュニケーション
・86%の患者が治療開始前に副作用や体調の変化について医師から説明を受けていたが、その頻度としては45%が「治療開始前に説明を受けたが、その後は受けていない」と回答しており、フォローアップ不足の可能性が伺われる結果となった。
・3割の患者が治療期間中に体調の変化や症状を経験しているが、うち6割が次の診察日までその症状を医療従事者に伝えていなかった。その理由としては「我慢できる範囲だと思った」「急いで報告すべきとは思わなかった」が上位に挙がった。
本調査を監修した国立がん研究センター中央病院の奥坂 拓志氏は「肝がんはかつてはB型・C型肝炎を原因とするウイルス性が大半だったが、現在では非ウイルス性が増加している。非ウイルス性では生活習慣、とくに脂肪肝(アルコール性肝疾患やNAFLD)が大きなリスク因子となる。ALT値が30を超えたら受診を呼びかける日本肝臓学会の『奈良宣言』の徹底による肝がんの早期発見が重要だ」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)